日本の歌をベラルーシ語で〜「月と日」プロジェクト

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□2004年
「さくら」
インタビュー
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□CD完成、コンサート
はじめに
・コンサートレポート(1) (2)
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□「月と日」
・スタッフ紹介
(1) (2)
ジャケットデザイン
収録曲と歌詞カード
トーダル君について
WZ−オルキエストラについて
CD解説日本語訳
□収録詩訳
1.「十字路」
2.「天使たち」
3.「秩序」
4.「正方形」
5.「亜麻」
6.「祈りの試み」
7.「夕べ」
8.「葉」
9.「私たちのビリニュス」
10.「一つの祖国」
□収録曲解説
1.「さくら」
2.「朧月夜」
3.「茶摘み」
4.「浜辺の歌」
5.「われは海の子」
6.「紅葉」
7.「村祭」
8.「十五夜お月さん」
9.「冬の夜」
10.「故郷」
思い出のエピソード
 

■ 「月と日」収録曲解説

2.「朧月夜」

 まずタイトルの朧月夜ですが、ロシア語に翻訳するとき、私は「朧」ってどうやって翻訳すればいいのだろう? と悩み、結局「霧がかった月の夜」と翻訳しました。
 カモツキーさんはこれをベラルーシ語で「色あせた月の夜」と翻訳しています。
 色あせた、と聞くと物悲しい気持ちになりますが、トーダル君はカントリーミュージック調の編曲をしており、何だか牧歌的な歌になっています。トーダル君とクセニヤさんのデュエットが、恋人たちの夕べの散歩を連想させます。
 とても美しく、少し悲しいような気持ちにもなるけれど、平和で静かな「朧月夜」の持つ世界が再現できている曲です。でも再現といっても、日本人がする再現とは、やはりどこか違い、ベラルーシらしさが表現されています。

 ではベラルーシ語歌詞の日本語訳です。

・・・・・・・・・

 「朧月夜」(「色あせた月の夜」)

日は青い山の後ろへ沈んでゆき
おいかけるように霞が灰色の道を覆う
春風が天の上からそよ吹いて
私たちの夢を月が淡く彩る

夜は色彩も少なくなり
もうすでに今は、それもはっきりとは分からない
道は村へと、森へと続く
ここを歩いていた人も遠ざかり
静けさの中に隠れた
それを見ていたのは月だけ
そして月は光り、黙っている

・・・・・・・・・

 「さくら」と同様に、原詩が美しい映像を見ているかのように歌っていてるのに対し、カモツキーさんの翻訳では、擬人法が使われており、また月と人間との関係が近いように創作しています。原詩では出てこない「私たち」という人間が詩の中に登場します。

 1番の歌詞は原詩とあまり変わりません。ただ、ベラルーシには菜の花はほとんど咲いていないそうなので、ベラルーシ人にはなじみがなく、カットされて菜の花畑に沈んでいく日が、山の後ろに沈んでいます。

 また2番の歌詞は原詩とはずいぶん変わっています。原詩では「色」や「音」が重要な要素なのですが、ベラルーシ語の詩では音のほうは、ほとんど記述されません。カモツキーさんからすれば、
「こんなに美しい情景が広がっているというのに、何でまた突然蛙?」
と変に思ったかもしれません。
 日本人は蛙の鳴き声にも、蛙が水に飛び込む音にも情緒を感じますが、ベラルーシ人の感覚では、単に「やかましい蛙」なのかもしれません。
 あと、ベラルーシ語に翻訳すると、蛙という言葉は「跳びはねるもの」という意味なので、この言葉だけが全体の中で浮いてしまうかもしれない、と考え、カットされた可能性もあります。
 2番はタイトルのイメージに合わせて、色あせた風景と静けさをテーマに絞って、ベラルーシ風に改変されたと言っていいでしょう。
 
・・・・・・・・・

「朧月夜」作詞:高野辰之  作曲:岡野貞一

1 菜の花畠に 入日薄れ
  見わたす山の端(は) 霞ふかし
  春風そよふく 空を見れば
  夕月かかりて におい淡し

2 里わの火影(ほかげ)も 森の色も
  田中の小路(こみち)を たどる人も
  蛙(かわず)の鳴くねも 鐘の音も
  さながら霞める 朧月夜

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 トーダル&WZ-オルキエストラについて、詳しくは以下のリンク先からご覧ください
・「Tのベラルーシ音楽コラム」  バラード 季節の香り
(ベラルーシの部屋内にある紹介ページにあるトーダル&WZ-オルキエストラのCD紹介ページ)
・トーダル君の公式サイト

辰巳雅子
Date:2005/10/25