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■ 「月と日」収録曲解説
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2.「朧月夜」
まずタイトルの朧月夜ですが、ロシア語に翻訳するとき、私は「朧」ってどうやって翻訳すればいいのだろう? と悩み、結局「霧がかった月の夜」と翻訳しました。 カモツキーさんはこれをベラルーシ語で「色あせた月の夜」と翻訳しています。 色あせた、と聞くと物悲しい気持ちになりますが、トーダル君はカントリーミュージック調の編曲をしており、何だか牧歌的な歌になっています。トーダル君とクセニヤさんのデュエットが、恋人たちの夕べの散歩を連想させます。 とても美しく、少し悲しいような気持ちにもなるけれど、平和で静かな「朧月夜」の持つ世界が再現できている曲です。でも再現といっても、日本人がする再現とは、やはりどこか違い、ベラルーシらしさが表現されています。
ではベラルーシ語歌詞の日本語訳です。
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「朧月夜」(「色あせた月の夜」)
日は青い山の後ろへ沈んでゆき おいかけるように霞が灰色の道を覆う 春風が天の上からそよ吹いて 私たちの夢を月が淡く彩る
夜は色彩も少なくなり もうすでに今は、それもはっきりとは分からない 道は村へと、森へと続く ここを歩いていた人も遠ざかり 静けさの中に隠れた それを見ていたのは月だけ そして月は光り、黙っている
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「さくら」と同様に、原詩が美しい映像を見ているかのように歌っていてるのに対し、カモツキーさんの翻訳では、擬人法が使われており、また月と人間との関係が近いように創作しています。原詩では出てこない「私たち」という人間が詩の中に登場します。
1番の歌詞は原詩とあまり変わりません。ただ、ベラルーシには菜の花はほとんど咲いていないそうなので、ベラルーシ人にはなじみがなく、カットされて菜の花畑に沈んでいく日が、山の後ろに沈んでいます。
また2番の歌詞は原詩とはずいぶん変わっています。原詩では「色」や「音」が重要な要素なのですが、ベラルーシ語の詩では音のほうは、ほとんど記述されません。カモツキーさんからすれば、 「こんなに美しい情景が広がっているというのに、何でまた突然蛙?」 と変に思ったかもしれません。 日本人は蛙の鳴き声にも、蛙が水に飛び込む音にも情緒を感じますが、ベラルーシ人の感覚では、単に「やかましい蛙」なのかもしれません。 あと、ベラルーシ語に翻訳すると、蛙という言葉は「跳びはねるもの」という意味なので、この言葉だけが全体の中で浮いてしまうかもしれない、と考え、カットされた可能性もあります。 2番はタイトルのイメージに合わせて、色あせた風景と静けさをテーマに絞って、ベラルーシ風に改変されたと言っていいでしょう。 ・・・・・・・・・
「朧月夜」作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一
1 菜の花畠に 入日薄れ 見わたす山の端(は) 霞ふかし 春風そよふく 空を見れば 夕月かかりて におい淡し
2 里わの火影(ほかげ)も 森の色も 田中の小路(こみち)を たどる人も 蛙(かわず)の鳴くねも 鐘の音も さながら霞める 朧月夜
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トーダル&WZ-オルキエストラについて、詳しくは以下のリンク先からご覧ください
・「Tのベラルーシ音楽コラム」 バラード 季節の香り
(ベラルーシの部屋内にある紹介ページにあるトーダル&WZ-オルキエストラのCD紹介ページ)
・トーダル君の公式サイト
辰巳雅子
Date:2005/10/25
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