Tのベラルーシ音楽コラム
ズィミツェル・バイツュシュケビッチ(トーダル)&WZ-オルキエストラ 〜バラード〜
このミュージシャンはベラルーシで非常に有名で若い人に人気があるのですが、いつも私が思うのは 「名前が覚えられない〜。舌が回らない〜。」 ・・・です。 しかもこの人は、ロックグループ「クリヴィ」時代、ドイツなどでも公演をして、海外でも知名度が高いベラルーシ人ミュージシャン・・・ということになっているのですが、こんな覚えにくい名前ないよ〜、本当にドイツ人の間で名前が知られているのかと思っていたのです。 が、ちゃんと彼には簡単なあだ名があったのです。それが「トーダル」・・・というわけで、このコラムでも「トーダル」で統一します。 ちなみにトーダルとは現在はほとんど使われていない、古いベラルーシの男性名です。
トーダル君(30歳代の男性)は作曲家であり、そして必ずベラルーシ語で歌うロック歌手です。 ベラルーシ語で歌うベラルーシ・ロック界の中で有名な「パラーツ」の元メンバーでした。「パラーツ」もベラルーシ民謡やベラルーシの楽器を使うなど、伝統的な面に現代のロックや、その他新しいことを取り入れた音楽を作っているのですが、それに飽き足らなかったトーダル君は脱退。「クリヴィ」という新しいグループを、 ボーカルのベラニカとギターのピートと結成しました。(それぞれ、本名は「べラニカ・クルグロワ」「ピョートル・パウラウ」。なぜかこういうニックネームをつけているベラルーシ・ロックミュージシャンは多い。)
「クリヴィ」は「パラーツ」より、もっとロック色が濃く、伝統的な部分が少ないのですが、音楽も洗練されて聞きやすい印象です。メンバーの音楽レベルも高いと思います。だから西側ヨーロッパでコンサートができたのかもしれません。 しかし、ある意味ベラルーシらしさが薄くなって、「パラーツ」のような強烈な個性がなく、わざわざ言われないと、これがベラルーシのロック音楽なのか、それとも他の国のロック音楽なのか、ちょっと聞いただけではすぐに分からない曲もたくさんあります。もちろんベラルーシ語で歌っているのですが、日本人が聞いても、どっかのヨーロッパの国の音楽なんだろうな、としか思えないんですよね。
・・・とまあ、私が感じたことをトーダル君も思ったのかどうか知りませんが、トーダル君は2002年「クリヴィ」も脱退。ソロ活動を開始しました。 そして発表した新作のCDがこれ「トーダル & WZ-オルキエストラ 〜バラード〜」です。
トーダル君は「マルチ演奏者」という肩書きを持っているそうですが、これは何かというと、いろんな楽器が弾ける人、ということらしいです。でもソロ活動、と言っても1人でできることはかぎられているので、 WZ-オルキエストラというバックバンドを率いての新作CD製作です。
で、このWZ-オルキエストラというのは何かというと、(まあ、「オルキエストラ」は「オーケストラ」だろうと、予想がつきますが。)4人組のミュージシャンが集まったグループです。 たったの4人なのに、オーケストラ、なんて名称にするか?! とつい突っ込みたくなりますが、それはおいといて、じゃあ「WZ」は何を意味するのか? というとベラルーシ語の「東西」を表す言葉の頭文字なのです。4人だけなのにスケールの大きい名前のグループです。
さて、「WZ-オルキエストラ」のメンバーは スラーワ:コントラバス アレックス:バヤン クセニヤ:バイオリン、ジャム・ビー イワ:アコースティック・ギター、アコーディオン
・・・です。ここでもクセニヤ以外、全員あだ名がついている・・・。 ちなみに本名は(暇な方だけお読みください。(^^;))それぞれ上からヴャチァスラウ・シャルギエンカウ、アリャクサンダル・シュバラウ、クセニヤ・ミンチャンカ、アレーク・イワノビッチ・・・です。 トーダル君はクラリネットとフルート、そしてボーカルを担当しています。 クセニヤさんも、ボーカルで、少しだけ参加しています。
さて、CD「バラード」の内容ですが、19曲収録の中で、2曲はベラルーシ民謡をアレンジしたものです。歌詞は全てベラルーシ語です。タイトルどおりバラードが多いのですが、19曲のうち半分の曲はそれぞれ1分ぐらいしかないインストゥルメンタルで、全部で38分25秒しか収録されていません。 聞いていて「ああ、トーダル君はソロになってこういう音楽をやりたかったんだなあ・・・」と分かってくるアルバムです。 もっとたくさんの曲が収録されていたらいいのにな〜、とも思います。 CDジャケットのデザインは地味ですが、ベラルーシの伝統文化である切り紙細工がモチーフになっていて、あくまでベラルーシ色にこだわるトーダル君の姿勢がよく表れたファーストアルバムとなっています。
by ベラルーシのT
Date:2003/12/03(Wed)
08:04
|