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■ 「月と日」収録曲解説
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6.「紅葉」
この曲はオリジナルの曲調がよく残された作品です。
間奏で流れるトーダル君の高い声に驚かされます。すごく声域が広いな、と感心しました。また歌い方の調子が落ちていく紅葉が見えるようで、すばらしい歌唱力だと思います。
日本人の感覚からすると、ややテンポが速いような感じを受けますが、CDを聞きながらベラルーシ語に続いて日本語で輪唱ができます。
この曲を聴くと、日本人の皆様も「ああ、紅葉だなあ。」と思えます。
ところが、ベラルーシ語の詩は原詩とはずいぶん変わっています。
題名も「晩秋」に変えられています。
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「紅葉」(「晩秋」)
小道は森を抜け、空を歩いて川まで続く
そこでは秋が葉を赤や金に染める
風は木を揺らし、冬のためにその服を脱がせる
木々はざわめき遊び、愁いをもたらす
森の小道は積もった葉の上で消え、冬を待つ
秋は回りながら空を雲で隠し
風は気ままに吹きつけて、色彩を大地のあちらこちらに落とす
十二月がやってきたら、冬の最初の日が始まる
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「紅葉」の原詩は文学的で、古典の香りもする名詩だと思います。日本の美しい秋の山、透き通った川を流れていく紅葉が目に見えるようです。
この詩に関しては私はロシア語訳をしませんでした。私がベラルーシ大学で日本語教師の教鞭を取っていたとき、翻訳コンテストというものを学生を対象に行ったのですが、そのとき「紅葉」の詩を日本語からロシア語に翻訳する問題を出したのです。そのとき優勝したのがヴォルハ・ビンニクさんという学生で、原詩の内容を損なわず、大変上手に韻を踏んだ翻訳をしました。それをそのままベラルーシ語に翻訳すれば簡単なのではないか、と思い、カモツキーさんに渡したのです。
しかし、カモツキーさんは紅葉そのものの美しさを詩の前面には出しませんでした。ロシア語訳とも大きく違っています。
この詩でもカモツキーさんがよく使う擬人法が用いられていますが、自然を見ている人間は出てきません。「自然と人間」という構図ではなく、この歌に関しては詩人の心の中にある風景を表現したように思われます。
「晩秋」というタイトルも憂愁に満ちており、「紅葉」が秋真っ盛りのイメージなのに対して、この歌は今にも雪が降り出しそうです。紅葉ではなく、森や風、雲や空など主役が多いです。
原詩では重要な役割を果たす川もほとんど出てきません。
また具体的に、これはもうすぐ12月になる時期の(11月の)歌である、と書いてあります。
この曲の前の「われは海の子」が夏の歌であったのに、突然11月の歌が続くのは、唐突な感じもします。トーダル君は一度曲順を変えることを提案したのですが、結局変更しませんでした。もしかしたら、このあたりの曲順を変えたかったのかもしれません。
でも、全体を通して聞くと、歌詞の内容の細かいところにまで気にしなければ、曲の流れとしてはこれでいいような印象を私は持っています。
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「紅葉」 作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一
1 秋の夕日に 照る山紅葉(もみじ)
濃いも薄いも 数ある中に
松をいろどる 楓(かえで)や蔦(つた)は
山のふもとの 裾模様( すそもよう)
2 渓(たに)の流れに 散り浮く紅葉
波にゆられて 離れて寄って
赤や黄色の 色さまざまに
水の上にも 織る錦
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トーダル&WZ-オルキエストラについて、詳しくは以下のリンク先からご覧ください
・「Tのベラルーシ音楽コラム」 バラード 季節の香り
(ベラルーシの部屋内にある紹介ページにあるトーダル&WZ-オルキエストラのCD紹介ページ)
・トーダル君の公式サイト
辰巳雅子
Date:2005/10/27
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