日本の歌をベラルーシ語で〜「月と日」プロジェクト

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□2004年
「さくら」
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□CD完成、コンサート
はじめに
・コンサートレポート(1) (2)
(3) (4)
□「月と日」
・スタッフ紹介
(1) (2)
ジャケットデザイン
収録曲と歌詞カード
トーダル君について
WZ−オルキエストラについて
CD解説日本語訳
□収録詩訳
1.「十字路」
2.「天使たち」
3.「秩序」
4.「正方形」
5.「亜麻」
6.「祈りの試み」
7.「夕べ」
8.「葉」
9.「私たちのビリニュス」
10.「一つの祖国」
□収録曲解説
1.「さくら」
2.「朧月夜」
3.「茶摘み」
4.「浜辺の歌」
5.「われは海の子」
6.「紅葉」
7.「村祭」
8.「十五夜お月さん」
9.「冬の夜」
10.「故郷」
思い出のエピソード
 


■ 「月と日」収録曲解説

3.「茶摘み」

 当然ですが寒冷気候のベラルーシにはお茶は生えません。

 ベラルーシ人に、茶摘みという言葉から何を連想するか?と問えば、まずインドかスリランカの茶畑が脳裏に広がります。そこではサリーを身にまとった乙女たちが、せっせと茶の葉を摘んではかごの中に入れていす。大変な労働です。さらには、恐ろしく安い賃金でこき使われている、というイメージです。日本で言うところの「ああ、野麦峠」です。

 そのような悲惨な労働のイメージがあったところへ、楽しい日本の茶摘み歌を聴いて、トーダル君たちはとても面食らったようなのです。 「なあ〜んだ、明るいなあ。アレンジも明るくしてしまえ。」 と思ったのでしょうか、この曲はレゲエ調の編曲がされています。

 初めて聞いたベラルーシ人は 「あ、何? 日本の歌? それともジャマイカ?」 と驚きます。  

 さらにはラッパーの合いの手が入ります。そのため、ますますベラルーシ人は驚きます。脳裏に浮かんでいた気の毒な女性労働者たちのイメージが瓦解します。

 いや、日本人だって驚きます。 「あ、何? 日本の歌? それともベラルーシ? 一体何?」 と思います。こんな楽しい茶摘み歌を歌いながらなら、あっという間に仕事も終わりそうです。

 ベラルーシ語の歌詞も大変楽しいものになっています。またベラルーシを代表するベラルーシ語ラッパー、パミドーラウさんのラップが聴けるのがうれしいですね。

 パミドーラウさんの公式HPはこちらです。(ただし、ベラルーシ語表記のみ)
http://pomidoroff.net/

 後から分かったことで、しかもジャケットのどこにも書いていませんが、ラップの歌詞の作詞者はカモツキーさんではなく、パミドーラウさんです。 (<>内はラップボーカルの歌詞です。ところどころ翻訳不可能な言葉が入っていますが。)

・・・・・・・・

「茶摘み」
(茶の葉を摘みながら)
イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜 <ハドゥスル!> イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜

春の間、夏の収穫を待っていたよ
そしてほら、やっと茶の葉をみんなで摘むことになった
笠をかぶって、着物には赤いたすきをかけて まるで茶畑に花が咲いたようだよ

イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜 アーイ! <ゾビビボンビボンビ、笠に赤いたすきが合ってるぜ。最高! うまい! べボンビアータ、うまいのは緑茶!(イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜) 緑の葉っぱのお茶!> <ハドゥスル!> イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜

輝く日差しの中で歌いながら働こう
<日の光の中で、歌を歌えばそれに茶摘み仕事はくっついたり、離れたりする>
歌は心を暖め、奮い立たせ、仕事をはかどらせるよ
<追い風が仕事をはかどらせるぜ>
明日、茶の香りがみんなの奇跡と喜びになるように
<みんなで、みんなで作るハーモニー!>
今日こそ緑の茶の葉を摘みましょう イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜
<緑の葉が生えなければ、収穫ができないだろう。これは簡単な仕事さ。工場で働くわけじゃない。個人経営の畑のあぜで働くわけじゃない! 自分のために、みんなのために働かないと。そう、たくさん葉を集めるために。緑の葉がみんなにとって、よいものになるために! ハー!  俺は働き者。やらされなくても喜んで働く。命令されなくても畑仕事をする。茶畑で背中をずっと丸めて生きろ、なんて言わなくていい。ただうまい飲み物が好きなだけだ! 収穫の仕事が始まったのなら、それはみんなでする共同の作業。だから働くんだ。 祝福と栄光を! みんな兄弟姉妹のように仲良く働いてる。さあ大変な労働には一杯の緑茶を!>

春の間、夏の収穫を待っていたよ
<また畑に出た俺は、ほら、もうこんなに遠くまで来たぜ>
そしてほら、やっと茶の葉をみんなで摘むことになった
<みんなといっしょだと、俺はこんなに優しい男。緑のお茶の葉とともにいる今も。エー!>
笠をかぶって、着物には赤いたすきをかけて
<これはみんなの作業。偉大さと栄光! そう、こんな仕事がある。>
まるで茶畑に花が咲いたようだよ
<兄弟たちよ! 姉妹たちよ!>

イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜 イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエ〜 <ウー! ウー! ウー! ハ!>  イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエイ!
・・・・・・・・・  

解説です。「八十八夜」って何だ? と思ったカモツキーさんは、ベラルーシ人には分からないこの表現を「毎日指を折って数えていたように収穫を待っていた」と解釈しました。

 1番の歌詞はあまり原詩と違いがありません。日本の茶畑の光景を見たことがないカモツキーさんは、笠や赤いたすきというものに、美を感じたようで、緑一面の茶畑の中に見え隠れする花のようにきれいなもの、という詩にしています。確かに日本人にとっても緑と赤のコントラストが見えてくる歌詞だと思います。

 2番の原詩は「摘め」という言葉が何度も出てきて、私は詩としてはあまり好きではありません。カモツキーさんも楽しい労働歌として創り直し、明日のために今日働く、という解釈を加えていますが、それも「今働いとけば、明日は楽ですよ。」といった教訓ではなく、「みんなの明日の幸せと喜びという結果が得られるように、今日働きましょう。」というもっと広くて深い意味を持たせています。

 また歌が仕事を楽にする、苦労を軽減するといった芸術の効用もはっきりと歌っています。またこの茶摘み歌を聴くと、心が軽くなりませんか? と問いかけているようにも思えます。  一見、日本の労働歌とレゲエとラップがごちゃ混ぜになったような、軽快な曲に聞こえますが、歌詞の持つ意味はけっこう深いです。 (パミドーラウさんのラップの歌詞も、一見変テコですが、よく読むと、すごく奥深いです。)

・・・・・・・・・
「茶摘み」作詞作曲者不詳

1 夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る。
 「あれに見えるは茶摘みぢやないか。あかねだすきに菅の笠。」

2 日和つづきの今日此の頃を、心のどかに摘みつつ歌ふ。
 「摘めよ、摘め摘め、摘まねばならぬ、摘まにや日本の茶にならぬ。」

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 トーダル&WZ-オルキエストラについて、詳しくは以下のリンク先からご覧ください
・「Tのベラルーシ音楽コラム」  バラード 季節の香り
(ベラルーシの部屋内にある紹介ページにあるトーダル&WZ-オルキエストラのCD紹介ページ)
・トーダル君の公式サイト

辰巳雅子
Date:2005/11/5