2003年3月26日にビタペクト2と「放射能と栄養」のコピー無料配布運動としてSOS子ども村での第2回目の配布を実施しました。
渡した個数は保養に来ていた子ども9人分と付き添いのお母さん2人の分、合わせて11個です。今回もお話を直接うかがうことができました。
放射能障害と思われる甲状腺の異常は、9人の子ども全員にありました。そのほか、免疫力の低下、貧血、腎臓の病気などをそれぞれ抱えており、放射能と関係があるのかどうか分かりませんが、生まれつき片目が失明している子どもが、今回保養に来ていました。
このSOS子ども村で3週間保養した結果、ビタミン、ヨードたっぷりの食事ができ、2キロも体重の増えた子どももいたそうで、お母さんたちはとても喜んでいました。
ただ今回はいわゆる放射能汚染地域とは認められていないスモレビッチという町から来ていたのですが、この点について詳しい説明を前回の配布のときはお会いできなかった担当者の方がお話してくれました。このSOS子ども村でチェルノブイリ被災児の保養を受け入れ始めたのは1996年からです。2003年3月26日現在で、保養にきた子どもとその付き添いの母親の総数は1193人になります。1997年からは保養だけではなく、治療の必要な子どもたちも受け入れを始めました。(総数557人。)合計1750名の子ども達と付き添いの母親がSOS子ども村に滞在したことになります。
どのように保養及び療養に訪れる子ども達を選別しているかというと、このSOS子ども村が孤児院である関係から、ベラルーシ各地の多子家庭擁護協会と協力関係にあり、その協会に登録されている家庭の子どもでさらに放射能による健康問題を抱えている子どもが選ばれているそうです。主にゴメリ、バブルイスク、モズィリ、ジトコビッチ、チェチェルスク、ピンスク、ブレスト、ストーリン、モギリョフ、ノボポーロツク、スモレビッチ・・・などの地域から子ども達を招聘しています。
放射能汚染地域でないブレスト、ノボポーロツク、スモレビッチといった地域からも、子どもが選ばれていることについて、担当者の方はこのように話していました。 「チェルノブイリの事故が起こったとき、ベラルーシ全土に放射能が降り注ぎました。現在健康問題が多く起こっている地域は、その中でも特に放射能濃度が高かった地域です。そのように汚染地域として認定された地域に住む子どもは優先して、治療を受けたり、外国へ保養に行ったりしています。しかし、公式に汚染地域として認定された地域以外にも放射能は降ったのですから、そのため発病している子ども達もいます。ところが、そういった子ども達は高濃度汚染地域に住んでいない、という理由から内外からの援助対象から漏れてしまっているのです。低汚染地域とはいえ、自然発症する率が非常に低い小児の甲状腺異常が起こっています。これは、間違いなく放射能の影響によるものです。 SOS子ども村はベラルーシ国内にあるわけですから、外国の援助団体が見逃しがちな低汚染地域に住む放射能障害を持つ子ども達も、対象に入れるよう、細かな対応をしています。」
・・・というお話に私も大変共感を覚えました。
SOS子ども村での保養および療養を希望している家庭は多く、各地域の多子家庭擁護協会には順番待ちのリストがあるそうです。担当者の方は、保養滞在者用に1軒、療養滞在者用に1軒の家屋しか与えられていないので、少しずつしか招聘できない、とこぼしていましたが。それでも1750人の子ども達とお母さんが滞在でき、健康になって帰宅できたのですから、すばらしい実績だと私は思います。
担当者の方は、残念ながらここに来たのが遅く、1年間も療養滞在していたのに亡くなった女の子が1人いたことや、また生まれつき歩くことができず、ベラルーシの医者も見離したので、モスクワの病院にも行き、それでもよくならず、あきらめてベラルーシに帰っていた男の子が、SOS子ども村へ療養に来て時間はかかったものの、滞在中自力で歩けるようになった、という話をしてくれました。
また滞在中は、同じ村内に住む孤児たちと楽しく一緒に遊ぶようにしたりして、精神的なケアにも注意を払っている・・・ということでした。
担当者の方からは保養と療養に来た子ども達は全員、滞在中、放射能汚染度を測定しており、その費用はSOS子ども村が負担していること、また汚染値が高い子どもには(体重1キロあたり20ベクレル以上)ビタペクト2を1個ずつSOS子ども村が出費して購入して、渡していることを話してくれました。
しかし、チェルノブイリ被災児の数が多すぎ、1人1回分(1個)を負担するのが限度だそうです。今回お母さん達と話しているときも、担当者にお母さん達が 「もらったビタペクト2がどうしたらいいですか? また手に入れることはできますか?」 と尋ねていたのですが、 「製造販売しているベルラド研究所に問い合わせてください。でも、そのときの経費は自己負担になります。」 ときいて、ちょっとがっかりしていました。
でも、私が「放射能と栄養」のコピーも渡して 「ここに食品が含む放射能を減らす調理方法が書いてありますので、参考にしてください。これで、体内に放射能が蓄積するのを非常に少なくすることができます。」 つまり、ビタペクト2を今飲んで、体内にすでに蓄積してしまった放射能を、体外に排出してしまう。そしてその後は食品内の放射能をできるだけ除去して、体内に放射能が再びたまらないようにする・・・というのがチロ基金の目指していることなのです・・・と説明しました。
ビタペクト2も大変有用な健康食品であることは理解できるのですが、一生飲み続けるのは難しいことです。ですから、チロ基金としてはビタペクト2と「放射能と栄養」のコピーの両方をセットにしての配布することが現実的な解決方法だと考えています。
今回お話をきくことができたお母さん達は「親戚にもあげたいから。」と「放射能と栄養」のコピーを多めにもらっていました。
SOS子ども村は幸い協力と理解を示してくれていますので、今後も少しずつですがビタペクト2と「放射能と栄養」のコピーの配布を継続していこうと思っています。
最後になりましたが、ビタペクト2購入のため、また「放射能と栄養」をコピーするために必要な経費を寄付してくださった皆様、またバザーなどで基金の活動費を捻出してくださっている皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
2003/3 辰巳雅子
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