「茶の葉」コンサート後援

Date:2007/04/03(Tue)

 2004年に松尾芭蕉の生誕360周年を記念してベラルーシの現代音楽作曲家アンナ・コロトキナさんが「芭蕉の詩(うた)」を発表し、チロ基金はコンサートの後援やCD制作に協力しました。
 「芭蕉の詩」の詳しい内容はこちらからご覧下さい。

 そのコロトキナさんが2006年に再び日本をテーマにした作品を発表しました。
「茶の葉〜日本をテーマとしたピアノのための組曲 オリガ・ソトニコワ・ラモスに捧ぐ」
という作品です。
 タイトルの「茶の葉」は日本の歌「茶摘み」から採られています。
 今回の作品は日本の歌をベラルーシ語でカバーした音楽作品「月と日」を聴いたコロトキナさんが、収録曲のうちの「茶摘み」と「十五夜お月さん」が大変気に入って、自分流の編曲をし、さらに日本の短歌六首をイメージしたメロディーを加えた組曲です。
「月と日」について詳しくはこちらをご覧下さい。

 初演は2007年3月29日、アートギャラリー「ベルフヌィ・ゴーラド」 (ミンスク)で行われました。
 演奏はピアノと3種類の打楽器で、すべてコロトキナさん自身が演奏しました。
 「芭蕉の詩」では芭蕉の俳句をオペラ歌手のオリガ・ソトニコワさんがロシア語で朗読しましたが、今回は短歌の朗読はありません。でもコロトキナさんが選んだ短歌六首のロシア語訳はコンサートのプログラムに掲載され、訪れた人々に手渡されましたので、観客の皆さんは内容を読むことができました。
 
 この組曲は8章から成り立っていますが、それぞれのテーマ(歌と短歌)はこのようになっています。

T 十五夜お月さん
U 君がため春の野に出でて若菜つむ わが衣手に雪は降りつつ (光孝天皇)
V 吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ (文屋康秀)
W 心あてに折らばや折らむ初霜の おきまどはせる白菊の花 (凡河内身躬恒)
X わが庵は都のたつみしかぞ住む 世をうぢ山と人はいふなり (喜撰法師)
Y もろともにあはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もなし (大僧正行尊)
Z 茶摘み
[ 嘆けとて月やは物を思はする かこち顔なるわが涙かな (西行法師)

 短歌はどれも百人一首に入っているものばかりですので、日本人にとってもなじみ深い内容ではないでしょうか。短歌のロシア語訳は意訳されている部分もあり(例えば光孝天皇の歌が「若菜つむ」が「花をつむ」になっていたりしていました。そのほうがロシア語ではイメージしやすいのでしょうね。)日本人が感じる印象とベラルーシ人が感じる印象は微妙にちがうかもしれません。
 「茶摘み」と「十五夜お月さん」はやはりトーダル君とは違ったコロトキナさん風の編曲に変身していました。(特に「月と日」の「茶摘み」とは全然違っていました。)(^^;)
 日本の歌がベラルーシでどんどん化けていっています。
 「茶摘み」は「月と日」のレゲエ&ラップ風、賛美歌風、現代音楽風と3種類に増えましたからねえ。こういうのが聴ける私は幸せ者です。
(賛美歌風「茶摘み」については2006年の活動記録後半部分をご覧下さい。)

 それにしてもやはり「十五夜お月さん」は人気がありますね。
 聞いていて一番驚いたのは、ピアノを弾いているコロトキナさんがときどき立ち上がって、不思議な音を出していたことです。後で分かったのですが、コロトキナさんは打楽器のばちに当たるオリジナルの小さい楽器を皮で作り、それでピアノ線を叩いていたのです。
 コロトキナさんはこの作品をピアノが弾ける人が上演するのは自由とし、近い内に楽譜をネット上で閲覧できるようにすると話していました。
 ご興味のある方はぜひ演奏してみてください。ただオリジナルの皮のばちを手作りしないといけません。(^^;)

 日本文化情報センターが協力したことは、「芭蕉の詩」と同様に、短歌のロシア語訳や楽譜といった情報の提供、そして打楽器として仏具の鐘を貸し出したことです。
 コロトキナさんのように日本の文化を愛し、理解してくれるベラルーシ人のおかげで、ベラルーシで日本を近くに感じる人が増えていることが大変うれしかったです。

公演後のコロトキナさん
 
 画像は公演後のコロトキナさん。満足してますね。
 会場が暗くて画質がよくなく、分かりにくいのですが、左手で下げるように持っているのが、オリジナル楽器です。 
「茶の葉」についてはまた続報をご報告しますね。  

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