チェルノブイリ被災児マリーナさんとウラジーミル君の治療支援活動

第3回        2006年2月

 2003年にチロ基金は表皮水泡症という難病の子どもマリーナさんとウラジーミル君に治療支援活動を2回に渡り行いました。詳しくは左の第1回からご覧ください。

  治療の結果、水泡は出なくなり、マリーナさんとウラジーミル君も元気に通学を続けていました。
  ところが2004年秋、お母さんからマリーナさんが再発した、という電話がかかってきました。しかし、できた水泡は少しで大したことはない、という話でした。

  私がインターネットなどで調べたところ、表皮水泡症はビタミンEの投与によって症状が軽減されることがある、ということが分かりました。
  日本の表皮水泡症患者さんたちは、ビタミンEを多く含んでいるハンドクリーム「ユースキンA」(ユースキン製薬株式会社製)を患部に塗っている、ということを知り、2005年1月に1個マリーナさんに郵送しました。
  その後お母さんから
「これを塗ると水泡が柔らかくなって痛みが減る。」
という電話をもらいました。

  ほっとしていると、だんだん暖かくなってきて、症状が悪化することの多い表皮水泡症・・・ウラジーミル君も再発した、という連絡がきました。
治療前のように歩けないほど痛い、という電話に驚き、ビタミンEの経口錠剤と2種類のマメ用の絆創膏を2005年7月に送りました。

8月には、2種類の絆創膏のうち適しているほうを電話で教えてもらい、今度はそれを34枚、さらにユースキンAを2個を郵送しました。
  ビタミンEの錠剤も飲んでいるが、飲んでから症状がよくなったという話でした。

  2003年の治療のときは抗生物質などで治したのですが、あまりこういう強い薬ばかりに頼るより、ビタミン剤で治るなら、そのほうが体にはいいのではないか、と私自身は思っていました。
  しかし、素人療法なので、もう一度病院に行くほうがいいのでは・・・とお母さんと話し合いました。
  そこでお母さんは農閑期にSOS子ども村へ保養へ行く希望を地元の多子家庭協会に出し、順番待ちをした結果、ようやく2006年2月に保養に来ることができました。
  しかし冬は症状がましになるため、水泡はほとんど治っている状態でした。でもせっかくミンスクの近くまで来たのだから、専門病院へ行こう、というになり、2月20日に予約を取って行ってきました。

  2003年に診察してくださったK先生は、今回一目見るなり
「ああ、ずいぶんよくなったねえ。」
と、満足そうな顔。
  この皮膚病専門の先生はマリーナさんとウラジーミル君を以前診たときに、
「これは表皮水泡症です。」
と看破し、さらに
「この病気の患者は初めて見ました。」
と少々興奮気味だったそうです。(^^;)
  そして診察して処方箋を渡したら、それがちゃんと効いたので、専門家としてとても喜んでいました。

「あの〜、おかげさまで先生に診てもらってから、完全によくなって、一時期水泡は全く出なくなったんですけど、また再発して・・・。」
というお母さんの説明に先生は
「でも、今はきれいなもんですよ。」
と微笑んでいます。
「今は冬だから、ましなんですが、去年の夏には20個も水泡ができて、歩けないほどだったんです。」
「もっと通気性のいい靴を履かないといけません。」
「つま先の開いたつっかけを履かせていたんですが・・・。」
「足が当たる靴底の材質をよく見てください。柔らかい靴底でも通気性が悪い物はだめです。」

  次に私が
「ビタミンEの入ったこういうクリームを塗っているんですが・・・。」
と先生に質問すると、
「ビタミンEは皮膚を柔らかくする。それはいいクリームです。」
という答えでした。
  やっぱりユースキンAは効くんですね。ただ医薬品ではないので、症状の軽減には繋がりますが、これで表皮水泡症が完治するわけではありません。

  先生からは水泡ができたときに貼るのはこういう絆創膏、つぶれたときにはこういう絆創膏を貼るといい、というアドバイスもしてもらいました。
  マリーナさんたちに会えたので、今回は直接ユースキンAを2個と絆創膏を47枚渡しておきました。
 
  結局、先生やお母さんと話し合った結果、気温が上がる時期になると症状がひどくなるため、それを予防する意味で、4月に再び診察を受け、再発予防案を考えることになりました。
 
  「チェルノブイリ被災児マリーナさんとウラジーミル君の治療支援活動」第2回の報告文を作ったときは
「ああ、治ってよかった。もう二度とこの二人の支援活動をしなくてすみますように・・・。」
と祈ったものです。

今、こうして第3回目の報告文を綴っているのが残念です。さらには4月に第4回の報告もしなくてならなくなるでしょう・・・。
  しかし、難病で苦しんでいるマリーナさんとウラジーミル君をほったらかすわけにはいけません。チロ基金としましては、二人の治療支援活動を継続する予定です。
 
  今回の診察にかかった費用や絆創膏やクリームなどにかかった費用は、全てチロ基金が負担しました。
  また2005年に3回にわたって絆創膏やビタミン剤などを郵送しましたが、そのためにかかった費用も全てチロ基金が負担しました。
  遅くなってしまいましたが、ここでまとめてご報告申し上げます。(経費は日本円に換算してありますが、全て当時のレートで換算しました。)

2005年1月 ユースキンA(1個) 送料 計944円

2005年7月 絆創膏(2枚) ビタミンE錠剤 送料 計660円

2005年8月 ユースキンA(2個) 絆創膏(24枚) 送料 計2420円 

2006年2月 ユースキンA(2個) 絆創膏(47枚) SOS子ども村・病院間の交通費 計5004円

合計 9028円

   絆創膏やビタミン剤の購入費や病院までの交通費など諸経費を捻出してくださった皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。また日本でユースキンAを買って、ベラルーシまで持ってきてくれたり、郵送してくださった(有)Vesna!の皆様にも厚くお礼申し上げます。
診察中
  診察中の様子です。
  左から皮膚病専門医のK先生。マリーナさん、ウラジーミル君、お母さんです。
  K先生を紹介してくださった小児外科医のS先生も、わざわざ診察に立ち会ってくれました。前回、心電図を取ったマリーナさんに様子をきくと
「まだ少し、心臓がドキドキしたり、目まいがすることがある。」
ということでした。S先生は
「寝る前にハーブティーを飲みなさい。」
というアドバイスをしていました。具体的にどういうハーブが効くのか教えていましたが、こういう自然療法のほうが体にはいいですよね。
  表皮水泡症も自然療法で治ればいいのに、と思いました。

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辰巳 雅子
Date:2006/02/24(Fri)

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