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地下鉄ネミーガ駅階段事故 No.3

(2000/06/17 by T)

 さて、事故現場付近がそのような状況にあったとき、夕立が急に降ってきたのです。 しかも、ミンスクの中心部には雨だけではなく、雹まで降り出したのです。5月も末のことなのに・・・。  

 運の悪いことに、事故現場付近には雨宿りできるような場所がほとんどなく、さらに ベラルーシ人が、あまり傘を使わない習慣であるため、(コンサートに折り畳み傘を持って行くような、若者もあまりいないでしょうが・・・。)その時、屋外にいた人は その場で唯一の雨をしのげる場所、地下鉄の駅へと走り始めたのです。   走りたくない人もいたかもしれませんが、広場に集まっている群集1万人の大部分が同じ方向に走り出すと、いやでも、その方向へ流されてしまいますよね。そのせいで、スポーツ会館前広場方面から、数千人の人の流れが地下鉄西口に向かって流れ始めたのです。

 東口では、教会のミサが終わったところだったので、多くの人がちょうど階段を下りているところでした。さらに東口近くのバス停留所でバスを待っていた人も、停留所の屋根の下に立っていて、そこで雨宿りできた人は良かったのですが、待っていた人が多かったので、 停留所に入りきれず、通りに立っている人もいました。その人たちは、雨だけではなく、雹まで降り始めたので、たまらず近くの屋根のあるところ、つまり、地下鉄東口に慌てて移動しました。  

 ところで、この地下鉄の西口と東口ですが、実は地下で一本の通路となってつながっているのです。地下鉄のホームには西口はこちら、東口はこちら、という案内板がありますが、そこで、うっかり間違えて、反対の方向から上がっても、結局この通路で二つの入り口がつながっているので、あまり、東西の違いがありません。ちょっと変ですが、この地下鉄駅はこのような構造になっています。ですから、雨が降り出したとたん、約1万人の人が西口と東口からなだれ込み、この通路で出会って激しい押し合いとなったのです。

 さらに、運の悪いことに、日曜日のその時間帯なら、10分か15分に1本しかない 地下鉄がちょうどその時、ホームに到着したのです。かなり大勢の乗客がそのまま東口、あるいは西口に向かって階段を上り始めました。しかし、どちらの出口を目指しても 結局、例の通路に一旦出ないといけないのです。したがって、地下鉄から降りた乗客全員がこの通路に足を踏み入れることになってしまったのです。こうして、この通路に、地上からも地下からも人が押し寄せ、逃げ場がなくなってしまいました。

 多くの人が来ると予想される屋外コンサートには、必ず警備員を配置しないといけないことになっています。この時も警察が会場の周囲や、地下鉄駅にもいました。西口の階段を降りたところで、数名(5人?)の若い警官が殺到してきた群集に向かって
「みなさん、走らないで!順番に地下鉄構内へ入ってください!」
と必死で人の流れが下方のホームへ行くように、叫んでいたことが証言されています。

 しかし、雷雨や、人の叫び声で、警官の声は群集には届かず、完全なパニック状態と なりました。この警官のうち2人が押しつぶされて亡くなりました。一番多くの方が亡くなったのがこの西口の階段です。雨水が流れ込んで足元が悪くなった階段、ミンスク地下鉄の暗い照明。この条件下で人から激しく押され、倒れてしまった人の上に、また別の人が重なっていきました。

 倒れた人が起き上がることは不可能でした。前方で何が起こっているのか知らない群集が、後から後からコンサート会場から雨宿りしようと押し寄せてくるのです。足元に人が折り重なって倒れているのが目に入っても、それをよけきれる間もありません。後ろから人がどんどん押してくるのですから・・・。

 この西口階段の部分だけに2000人の人が「いた」そうです。 亡くなった方の死因は、窒息、脳震盪、骨折、内臓破裂です。

 この事故で私の知り合いの親戚の娘さんが亡くなったのですが、彼女はうつぶせの 状態で倒れたところを群集に踏まれ、体の後ろ側(背中)一面、あざで真っ黒になっていたそうです。この事故では53人の方が亡くなり、300人の方が怪我をしました。

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