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地下鉄ネミーガ駅階段事故 No.2

(2000/06/14 byT)

 翌朝(5月31日)S夫は出勤し、私はちょうど勤めていた大学を退職したところだったので、家で家事などしていましたが、テレビやラジオはつけませんでした。

 午前9時ごろ、実家から電話がかかってきて、
「あんた、元気なの?!」
ときかれ、
「元気だけど???」
と答えると
「事故のニュース、知らないの?日本で大騒ぎしているのに。」
と母はすっかりあきれた様子。こうして、私も慌ててテレビをつけ、 事故のことを知ったのです。

 5月31日と6月1日の二日間、ベラルーシテレビは、全ての番組をとりやめ、1時間おきにニュース(15分−30分)を流していました。それ以外はクラシック・コンサートの録画(曲目はレクイエム)しか流しませんでした。ニュースでは死亡者の氏名が繰り返し読み上げられ、混乱した病院の様子、現場に花を添えるルカシェンコ大統領の姿などが報道されていました。

 さて、以下は5月31日付朝日新聞の記事の抜粋です。

「群集押し合い50人死亡。ベラルーシ地下鉄通路。(モスクワ31日大野正美) ベラルーシの首都ミンスクで三十日夜、地下鉄駅の通路に群集が殺到して激しい押し合いとなった。この事故でインタファックス通信は、押しつぶされた約五十人が死亡、三百人以上が骨折や打撲などのけがをしたと伝えている。地下鉄駅も近くではこの日、テレビ・ラジオ会社主催の伝統的な『ビールの日』の 催しがあり、約一万人が参加していた。途中で雷雨となったため、雨宿りのために群集が地下鉄の通路に一度に押し寄せた。騒ぎに乗じて、催しでの各種コンクールの賞品に用意されたテレビなどを略奪しようとした人がいたことも、混乱に輪をかけたという。」

 この記事における間違いは・・・「テレビ・ラジオ会社主催の伝統的な『ビールの日』の催し」という部分です。「伝統的なビールの日」というのはベラルーシにはありません。ベラルーシは、ウオッカの国で、ドイツのようなビール祭りや、 ビール・フェスティバルなどはありません。 間違いです。

 「賞品略奪が混乱に輪をかけた」というのもおかしいです。 確かに盗もうとした人がいたと思いますが、事故現場となった地下鉄通路と催しの会場だったスポーツ会館前広場は離れているのです。(300メートルぐらい) イベント会場で盗みを働こうとした人がいたとしても、それが離れた地下鉄通路での押し合い(将棋倒し)の原因となったとは思えません。

 ここでは日本では報じられなかった事故の詳細について、書きます。 私も友人から、これはタバコ会社主催のイベントだと教えられていたのですが、これもあまり正しくありませんでした。実際には、ベラルーシのFMラジオ局「ミール」が開局2周年を記念して、スポンサーであるタバコ会社「マグナ」とビール会社「オリバリー」と共同のイベントを開催したのです。

 数日前からラジオ「ミール」は「吸って空になったマグナのケースを2つ、5月30日スポーツ会館前広場で行われる開局2周年イベント会場に持って来てください。新品のマグナ1箱と交換します。」というCMを流していました。

 さらに当日、会場ではオリバリーが屋台を出し、ビールを売っていました。そして夕方、ラジオ局が招いたロック・グループ「マンゴ・マンゴ」が青空コンサートを無料で始めたのです。そのころには1万人近くの若者がステージ前に集まり、熱狂状態となりました。

 そして東口近くの大聖霊寺院では夕方のミサが始まっていました。五旬祭に当たっていたため、その日は普段より、訪れる人も多かったのです。

 さらに、日曜日の夕方というのはベラルーシでは公共の乗り物(バスや地下鉄)の本数が大変少なくなります。しかし、夏場は白夜に近い状態になるベラルーシでは、天気のいい夏は、夜9時ごろまで明るいので、カップルや家族連れが結構、夜遅くまでそぞろ歩きを楽しんでいます。

 したがって、コンサートに関係なく、事故現場近くを散歩していた人もたくさんおり、 さらに地下鉄やバスの本数が少ないため、かえって平日の朝のように混んでいる状態になっていました。地下鉄東口を出たところにバス停がありますが、事故が起こる直前、停留所には 日曜日でなかなか来ないバスを待っていた人が、かなりたくさんいたのです。

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