以下はベラルーシの部屋ブログ2008年3月12日の内容より転記編集しました (saba)
2008-03-12
3月10日にベラルーシの国営テレビ局ONTで生放送されたトークショー番組「選択」に出演しました。
テーマは「ベラルーシ在住の外国人は、ベラルーシ人にとって脅威かどうか?」
すごいテーマでしょ? (^^;)
そんなこと、ベラルーシでは外国人の私にきくのかとびくびくしながら、出演しましたわ・・・
そしたら、驚きの結果が・・・
この番組では視聴者から電話による投票を募り、その結果を発表します。今回は1万5030の投票があり、結果は・・・
「はい。在ベラルーシ外国人はベラルーシにとって脅威です。」76%
「いいえ。脅威ではありません。」24%
この最終結果が発表されたとき、生番組に出演していたにも関わらず、「ええっ!」と叫びそうになりましたよ。
(ロシア語が読める方は、こちらのONTサイトでご覧ください。)
http://www.ont.by/programs/programs/vibor/arhiv/0024974/ (2014年時点ではタイトルのみ)
ベラルーシは地理的に大陸の真ん中にあって、歴史的に見てもいろいろな民族が入ってきていました。
そんな中で、ベラルーシ人という少数民族が生き延びるためには、他民族との共存が不可欠。その結果、現在に至るまで、あんまり民族差別がない国民性を持っている・・・と言われています。
ベラルーシ人自身もそう思っているようで、
「ベラルーシ人は人種差別をしない。友好的に解決しようとするおとなしい民族だ。」
とはっきり言う人が大勢います。
なので、「ベラルーシに住んでいる外国人はベラルーシにとって脅威だ!」と言う人が76%もいた、というアンケート結果はショックでした。
で、ゲストの方々についてですが、私(日本人)以外でどんな民族がいたかというと・・・
・映画監督(両親はタジキスタン人とロシア人。ロシア生まれ。50年近くベラルーシ在住。)
・歌手(両親はアゼルバイジャン人とベラルーシ人。ベラルーシ生まれ。ユーロビジョンソングコンテストのベラルーシ代表候補、だったが、予選で落選。)
・大学教授(両親はアゼルバイジャン人とロシア人。アゼルバイジャン生まれ。33年間ベラルーシの大学の教壇に立つ。)
・レスリングのオリンピックチャンピオン(グルジア生まれのアゼルバイジャン人。ベラルーシ在住25年。ベラルーシ・ナショナルチームのメンバー。)
・ボクシング選手(オリンピック銀メダリスト。タゲスタン人。他にもタゲスタン出身のボクサーがベラルーシ代表として試合に参加し、好成績をあげているそうです。)
・カフェ経営の実業家。(アゼルバイジャン人。ベラルーシには20年在住。妻もアゼルバイジャン人だが、子どもとの会話はロシア語。)
・ベラルーシ・ジプシー協会会長(ジプシー。ベラルーシ生まれ。ジプシーは500年前からベラルーシに住み続けているそうです。)
あのですねえ、私以外、全員がロシア語ペラペラの旧ソ連の国の出身ですよ。ベラルーシ在住期間も「生まれたときからずっと。」とかめちゃくちゃ長い。
私だけ浮いている感じがしましたね。
インタビューも私には「ベラルーシ人と結婚されたんですね。」とかテーマをやたら「愛」に持っていこうとしており、まじめな質問はされませんでした。
「もっと私にしゃべらせてくれ!」とも思いましたが、番組中私にはマイクはほとんど振られませんでした。まあ、日本文化情報センターの宣伝のために行って来たので、まあ、映っただけでもいいんですが。
それでですね、これら「外国人」のほかに政治学者、役人、警察の代表が来ていました。
その話によると、ベラルーシの人口は約900万人。外国人が占める割合はたったの1%(ただし不法滞在外国人の数はこの中に入っていません。)
ベラルーシ領域内で犯罪を犯す外国人もいるにはいるが、隣のロシアやウクライナに比べると、大変少ない。
司会者は「ベラルーシの人口は減ってきています。経済的な視点から考えて、労働人口を増やす、つまり外国人をどんどん受け入れるほうが、ベラルーシ経済にとってはプラスなのでは?」
と話し始めました。しかし、そこへ視聴者からの電話。
「最近フランスで問題になった外国人労働者の問題のように、暴動が起こるから外国人はベラルーシに入れないほうがいい。」
それに対し、政治学者は
「フランスで人口に占める外国人の割合は15%です。ベラルーシではそのような暴動は起こらないでしょう。」
とばっさり。
さらにはレバノン人を名乗る男性から電話があり、
「ベラルーシに長年住んでいて、何の問題もない。ベラルーシ国籍を申請中。」
と言うと、スタジオから拍手が起こりました。
私以外の外国人ゲスト(この人たちを外国人呼ばわりすること自体が大間違い。もっと適任な人は見つからなかったのか?)たちも口々に
「人種差別など受けたことは一切ない。」
「ベラルーシは故郷そのものである。」
「こんなこと自体を番組のテーマにすること自体、ソ連時代には考えられませんでした。」
と発言。それはそうですよ。
どうせなら、私のようにロシア語が母国語ではない、滞在歴も10年以下という外国人を呼べばよかったのに。
映画監督や大学教授といった仕事の実績のある人を捕まえて、外国人と呼ぶほうが間違っています。
さらに次の視聴者からの電話は最悪でした。
「なんでわざわざベラルーシにタジク人やアゼルバイジャン人が来るのか? 市場で商売なんかするな。自分の国に戻って、立派な国家を建設せよ。住む家なんかやるな。」
あと、オンエアされなかったものの
「このまま外国人が増え続けると、純粋なベラルーシ人がいなくなり、民族が消滅してしまう。」
という電話もあったそうです。(そうなるまで何世紀かかるのか・・・)
スタジオのゲストが視聴者からの電話に引きつっていると、司会者が
「私事ですが、私の母はベラルーシ人ですが父はちがいます。戦後すぐの時期、多くの外国人が焼け野原になったベラルーシにやってきて、復興のために心血を注いだこともあるのです。」
とその視聴者に軽く反論。今のベラルーシがあるのはベラルーシ人だけの努力によるものではないのだから、現在になってベラルーシから外国人を追い出せ、といった意見はまちがっていませんか? と言いたいところなのでしょう。
番組の放映中は、画面の下に視聴者の電話投票の結果が棒グラフになって表示されていたのですが、出演していた私たちにはそれが見えませんでした。
そして番組の最後にスタジオのパネルにどーんと前述の
「はい。在ベラルーシ外国人はベラルーシにとって脅威です。」76%
「いいえ。脅威ではありません。」24%
が表示されたとき、叫びそうになりました。
ゲストの皆さんは固まってしまい、司会者が政治学者にコメントを求めると
「このような結果になるとは、予想していませんでした。驚きです。ベラルーシ人はベラルーシに住んでいる外国人についての情報をもっとよく知るべきです。われわれはフランスに住んでいるのではないのですから、フランスでの外国人労働者の暴動のニュースなどは必要ない。ただ外国人というだけで不必要に恐れの念をいだくのは、単なる情報不足なのです。われわれはもっと学ばなくては。」
と答えていました。(全くそのとおり!)
収録終了後、スタジオ横の廊下でゲスト外国人の皆さんは爆発したような勢いで、自分の意見を言っていましたが、私は(実はこの日、微熱が出ていて体調が悪かった)よろよろしながら、着物を着替えて、それを抱えて家路につきました。v
帰り道、地下鉄のホームで
「ああ、ここにいるベラルーシ人の76%が外国人、嫌いなんだ・・・。」
と熱が上がりそうになるのを感じました。
しかし翌日出勤すると、
「昨日のテレビ見たわよ!」
という同僚などから「あの結果はおかしい。」「視聴者のレベルがたまたま低かった。」とか、他にも知り合いから
「え、日本人のマサコがベラルーシ人の脅威だって? ぎゃははは!」
と爆笑されたりしました。
とにかく、こんな集計結果などは全く気にせず、ベラルーシにおける外国人人生を生きておりますよ、私は・・・。
脅威だの、嫌いだのと言ったところで外国人はたくさんベラルーシに住んでいるんだし、ベラルーシのために貢献している人だっていっぱいいる。
心配しなくても、ベラルーシの経済状況が今のままでは、まず出稼ぎ外国人が増える可能性は非常に少ない。そう言いたいですね。
あと、ベラルーシのテレビ局は、テーマにあったゲストの人選をしていただきたい。番組の準備の仕方がいい加減すぎます・・・。
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