ベラルーシ今昔物語

もくじ
■ 不思議な話
-- 涙を流す聖母子画
■語り伝えられる話
-- 黒衣の公女

 

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■語り伝えられる話

ネスヴィシュ城の幽霊「黒衣の公女」

16世紀の半ばネスヴィシュ城主だったミカライ(二コライ)・ラジビル(別名、黒公爵)は野心家でリトワニア大公国の中でもネスヴィシュ公国の地位を高め、さらにはネスヴィシュ王国を樹立しようと虎視耽々となっていました。
黒衣の公女の物語はそのような時代を背景に起こった出来事です。

ラジビル一族にバルバラという美しい人がいました。バルバラは早くに父を亡くし、また結婚後もすぐに夫が死んでしまったので、若き未亡人として兄に後見人となってもらい、 自分のお屋敷でひっそり暮らしていました。
その近くに当時のポーランド王子、ジギモント2世・アウグストの屋敷もありました。(名前が長いので、省略して以下「ジギモント」)
ジギモントは一目でこの美しいバルバラを好きになりました。やがて二人は相思相愛の仲に。しかし、二人の恋はすぐにバルバラの兄に知られ、黒公爵の耳にも入りました。
このことを知った黒公爵は、ラジビル一族がポーランド王族と血縁を持つことができる最大のチャンスと考え、甲冑に身を包むと馬を走らせ、バルバラの兄とともにジギモントの屋敷に押しかけました。
そしてバルバラと結婚するつもりなのかどうか、ポーランド王子に直接問いただしたのです。
ジギモントは心からバルバラを愛していること、必ず彼女と結婚することを黒公爵に約束しました。ただ、自分の母ボナ・スフォルツァはどこかヨーロッパの国の王女を王子と結婚させようと考えているので、ネスビシュ公女にすぎないバルバラとの結婚には反対するだろう、と言いました。
しかし、自分が王位につけば母の意見も押さえられるだろうから、結婚はそれまで待ってほしいとジギモントは頼みました。
こうしてジギモントとバルバラの婚約は極秘のうちに行われました。やがて父王が死に、ジギモントが王位につきました。ジギモントが母に自分にはすでに婚約者がいると伝えると、母は激怒し、バルバラとの婚約も結婚も決して認めないと宣言しました。
こうして二人の結婚は遠のきましたが、ジギモントは母が勧める他の王女との縁談を断り続けました。業を煮やした母はバルバラが生きている間は王子は彼女のことを諦めないだろう、と考え、バルバラを暗殺することにしたのです。
そして薬剤師モンティに命じて、バルバラが毎日少量の毒を飲むように仕向けました。その結果、半年後にバルバラは死んでしまいました。
バルバラの死を嘆き悲しんだジギモントはもう一度彼女に会えたら・・・と考え、魔道師に頼んで死者の国からバルバラの霊を呼び出すことにしました。
魔道師は魔法陣を床に描いて、その中にジギモントを立たせました。そこが死者の国と生者の国との境界となっているから、決してそこから出たり、霊に触れたりしないように、とジギモントに何度も念を押しました。
しかし、死装束姿のバルバラの霊が現れると、恋しさのあまりジギモントは魔法陣から飛び出し、バルバラを抱きしめてしまったのです。
そのとたん、雷のような音が辺りに響き、部屋には死臭が立ち込めました。そしてジギモントが約束を守らなかったばかりに、バルバラの魂は墓に戻れなくなってしまい、永遠にこの世をさまようことになってしまったのです・・・。
こうしてネスヴィシュにバルバラの幽霊が現れるようになりました。ジギモントの死後、この幽霊は喪服姿に変ったと言われています。
第二次世界大戦中、ネスヴィシュはドイツ軍に占領され、城は野戦病院の代わりとして使われていましたが、そのときもバルバラの幽霊がドイツ兵によって目撃されたそうです。ドイツ兵は「黒い服を着た女の幽霊」と言って恐れていました。
今でもこの黒衣の公女の幽霊をネスヴィシュ城で見たと言う人が大勢います。

2001/10 ベラルーシのT