日本でも、いや世界中でチェルノブイリ原発事故発生から20年のニュースや特別番組を報道していましたね。ベラルーシでも国営放送は26日、ほぼ1日中関連番組を放送していました。
各地でも追悼式典が催されたのですが、私が気にしていたのは、先月の大統領選の影響です。
野党勢力は4月26日にまた反大統領集会を開くと宣言していました。
毎年4月26日にはチェルノブイリ原発事故の犠牲者追悼集会が行われています。しかしそれはあくまで追悼集会で、反政府集会ではありません。
ロシアや日本の報道では、今年の集会に5000人集まったとありますが、実際にその数が本当だとしても、全員が全員「反政府」の人間とは限らない、とお考えください。
日本の報道では「野党指導者のミリンケビッチ氏が拘束された。」とあり、理由を集会の一部が未許可だったから、とありますが、つまり反政府集会が未許可だった、ということです。
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/kokusai/20060427/K2006042703100.html?C=S 知り合いで昨日「追悼集会に今から行く。」という人がいましたが、この人はあくまで追悼集会に行ったのであって、反政府集会へ行ったわけではありません。
さばさんがリンクを貼ったミリンケビッチ夫人のインタビュー記事、読みましたが現政府に対して「政治的チェルノブイリ」という表現で批判するのって・・・。
チェルノブイリ原発事故の犠牲者や遺族、今も病気で苦しんでいる人たちに失礼じゃない? と思いました。
そういうあなたは今まで、どういうことをしてきたのか? チェルノブイリ原発事故に対して何か支援するなりしたのか? とききたいです。
チェルノブイリ原発事故が今も大きな影響を人体や環境に与え続けていることは、日本でも報道されていることですか、ここでは取り上げません。
(普段行っているビタペクト2と「放射能と栄養」のコピー配布の報告文などを読んでいただけたら、と思います。)
残念なのはチェルノブイリ原発事故への対策が、非常に難しいことです。被害は何カ国にも何百万人にも何世代にも広がっています。
事故を起こした4号炉に石棺をかぶせていますが、老朽化していて、さらにそれを覆う石棺を造らないといけない。しかし現在チェルノブイリ原発があるウクライナには自力で第2石棺を造る経済力がない・・・。(抜本的解決方法を採らないかぎり、また数十年したら、今度は第3石棺を造らないといけなくなるのではないでしょうか。いたちごっこです。)
ルカシェンコ大統領は「ベラルーシが原発を持てば世界の対応が変わる。」と発言して、「また暴言吐いてる、あの独裁大統領。」と思われているようですね。
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/kokusai/20060427/K2006042701290.html しかし、これも見方を変えれば、こうなります。
ベラルーシが自国で自国の消費分の発電ができれば、ロシアからのエネルギーを輸入しなくて済むようになり、自立できる、そしてエネルギー問題つまり経済問題から脱却し、豊かな国になれるかもしれない、という観測からきた発言なのです。
私個人としては、原発よりももっと安全な発電所を建設してほしいですけどね。
それから「ソ連崩壊後、ベラルーシは非核国家となったが、今の私ならそんな決定はしない。」ともルカシェンコ大統領は発言していますが、ここで言う非核の核とは原発ではなく、核兵器のことです。
ソ連崩壊後ベラルーシは国内にあった核兵器を全てロシアに返したのですが、この決定についてはベラルーシ国民の間でも賛否両論があります。(今さらロシアに「やっぱり元通り返して。」と言っても、返ってくるわけはありませんが。)
また汚染されている南部地域の住民定着促進についてですが、どうなのでしょう。
健康被害が出るので、危険で浅はかな政策だと、野党は非難しています。反面、現実問題として住み続けている人もいます。そういう人々のために住みやすい住宅や医療施設を新しく建設するのは、必要なことであるようにも思えます。
基準を大幅に超えた高放射能汚染地域には今も人は住んでいません。(希望して住んでいる人も少数ながらいますが、それは例外とします。)
しかし、そこまでは汚染されていないけど、一応汚染地域という場所に住んでいる人は何百万人といます。その人々全員を別の地域に移住させるのは不可能です。
現実問題として今住んでいる人が、これからも住み続けることを前提とした対応を早く採らないといけません。
「被災地復興で世界からの支援は限られている。我々は自力でこの地に人が住めるようにしなければならない。」
という意見が大統領の口から出るのも理解できます。
ただ、外国からの援助がベラルーシの国境を越えにくい法律にどんどん変わっていっている事実を何とかしてほしいですね。金銭はもちろん古い衣料でも、外国からの支援が非常に受けにくい現法律は改正していただきたいです。
先日ニュースを見ていたら、ベラルーシ科学アカデミーのとある学者が、原発から出る核廃棄物の処理時間を驚異的に短縮する方法を開発した、と報道されていました。
この方法が実用化され、さらに大規模な処理場をベラルーシ国内に建設したら、ヨーロッパ中の原発から出る核廃棄物を、簡単に処理できるようになるのだそうです。
もちろん処理作業費用をヨーロッパの各国からもらいます。誰もが嫌がり、押し付けたい核のゴミを引き受けるのですから、みんな喜んでお金を払います。つまりベラルーシが儲かり、お金持ちの国になるということです。
ベラルーシ国内の核廃棄物処理場でもしミスがあり、放射能漏れ事故が少々起こっても平気、平気。どっちみちすでに放射能汚染されている土地なんですから、そのうえちょっとぐらい漏れたって、どうってことない。それより核廃棄処理技術を経済復興の柱として、外貨が集まるようにしましょうよ・・・というのがお上の思惑のようです。
日本人の皆さんはどう思われますか?
そのうちヨーロッパの各原発から、長距離輸送の特別仕様トラックが列をなしてベラルーシへどんどん核廃棄物を搬送してくる光景が見られるようになるかもしれません。
その通り道に当たる国(例えばポーランド)の幹線道路脇で、「危険なゴミを途中で漏らすな!」というプラカードを掲げた市民団体がデモ行進する・・・という光景も見られるようになるかもしれません。
こういう技術を開発する能力が人間にあるのなら、もっと安全な発電所を建設する能力があっていいと思うんですが・・・。
幸いベラルーシではビタペクト2という放射能を体内から排出する働きを持つ食品が、ベラルーシ人の手によって開発されました。
このような技術を開発した人々、技術屋ではないけれど懸命に援助活動している人々がいることも、ベラ部屋を読んでくださっている方々には忘れてほしくない、と思います。
4月22日SOS子ども村内でチェルノブイリ被災児の保養活動を続けているSOS母子ソーシャルセンターが創立10周年を迎え、記念式典が行われました。いつもこのセンターを通して、保養滞在している子ども達にビタペクト2などを配布しているのですが、記念式典に招待され行って来ました。SOS子ども村を設立したオーストリアをはじめ、多くの国からの援助がチェルノブイリの子ども達を支えていることが分かりました。
ベラルーシ側の子ども達もチェルノブイリをテーマにした劇を上演しました。会場はSOS子ども村に隣接する子ども腫瘍病院のホールだったのですが、入院中の子ども達も招かれて劇や歌を見ていました。点滴を受けながらチェルノブイリをテーマにした劇をどんな気持ちで見ていたのでしょうか。
SOS母子ソーシャルセンターの職員さんたちは10年間の功労が認められ、ベラルーシ政府から表彰されていました。(大統領からサッカーボール10個が寄贈されました。)
表彰するのはいいけど、もっと外国からの援助を受けやすい体制作り、法改正を今の政府にしてもらいたいと思いました。
(画像はベラルーシ人の子どもたちによるチェルノブイリをテーマにした演劇の1シーンです。黒いマントを来た人物が事故の惨劇、放射能の恐怖、人々の不幸を表現しています。劇の最後ではもちろん故郷の自然や幸福の復活を子ども達が演じていましたが・・・。)