Tのベラルーシ音楽コラム
アレクサンドラ&コンスタンチン 「SOJKA」
ベラルーシ音楽フォークモダン界の新星「アレクサンドラ&コンスタンチン」です。2002年にデビューしました。(あ、民謡など伝統音楽を現代風にアレンジした音楽をフォークモダンというそうです。) しかし・・・ ファーストアルバム「寒さなど怖れない」はTからするとあまりお勧めのCDではありません。なぜなら・・・
「アレクサンドラ&コンスタンチン」はその名のとおりアレクサンドラ・キルサノワとコンスタンチン・ドラペゾという男女二人のグループです。(ただし、ベラルーシ語表記ではアリャクサンドラ・キルサナワとカンスタンツィン・ドラペザになるのですが・・・。) 本当は「A&K」というのが正式なグループ名なのですが、これだけじゃ、何なのかよく分からないので、日本語訳では「アレクサンドラ&コンスタンチン」としています。 ベラルーシ語で歌うグループなので「アリャクサンドラ&カンスタンツィン」にすればよかったかなあ? と後になって思ったのですが、CDには英語で「Aleksandra&Konstantin」と表記されていたので、そのまま「アレクサンドラ&コンスタンチン」にしました。
さて、ファーストアルバム(全10曲、34分47秒収録)ですが、表ジャケットには大きく「A&K」小さく「寒さなど怖れない」と書いてあるだけで 「これだけじゃあ、どんなアーティストのどんな音楽なのか、よく分からないよ〜。」 と言う印象でした。 ひっくり返して裏ジャケットを見ると、スポンサーであるベルアズ・トラック社の黄色いトラックの絵がどーんと載っており、ますます「???」というCDに見えます。 中を開けると珍しく歌詞カードつき。そして二人の小さいけれどなかなかきれいな写真が・・・ そして、聴いてみればアレクサンドラの独特の歌声が、ベラルーシ民謡をアレンジした曲を歌っています・・・
と、ここまではいいのですが、なぜか英語の歌が2曲入っている・・・ しかも、自分達で作詞作曲した曲ではなく、某アメリカ歌手の歌をそのまま歌っている・・・ さらに、英語で「この英語の2曲は、演奏使用の許可をもらっていないのです。ごめんなさい。」といったことが書いてありました。(*_*;) まあ、ベラルーシのアーティスト(しかもデビューしたばっかり)がアメリカの作詞作曲家に著作権を払えるとは思いませんし、またばれるとも思えないのですが・・・ 正直言って 「こんなんじゃだめだよ〜〜〜!!!」 と思いました。最初に収録されている7曲は、ベラルーシ民謡をアレンジしてあって、いい味だしているし、最後はコンスタンチン作曲のきれいなインストゥルメンタルでしめ・・・なのに、もったいない!!! 「もっと自分達の世界を追求しないと!」 と私は心の中でアレクサンドラ&コンスタンチンを叱咤激怒していました。
・・・その後、1年ぐらい経ってから、何となくテレビで音楽番組を見ていたら、ファーストアルバムには入っていない曲をステージで歌うアレクサンドラ&コンスタンチンの姿が・・・ 「ああ、新曲か・・・。ということは、もうすぐセカンドアルバムが出るんだなあ・・・。また英語で歌っていたら笑うわ〜。」 等と思いながら、そのとき初めて二人が動いている姿をテレビで見ていました。
ボーカルのアレクサンドラは、歌いながらフルートを吹いたり、バイオリンを弾いたりしていて、ベラルーシによくありがちな「マルチ演奏者」でした。 しかも、それらの楽器を全部足元に並べていて、間奏が始まると、ぴょこんとしゃがんで拾い上げては演奏し、また次の楽器を拾っては演奏し・・・と 「何だかせわしないというか・・・大変だなあ・・・。」 と思いました。 ちなみにアレクサンドラは、この他オカリナ、ハープ、口琴、パーカッションまで担当しています。 コンスタンチンはギターとドムラを演奏しています。
さて、セカンドアルバムについてですが、アレクサンドラ&コンスタンチンが、私の叱咤激怒をテレパシーで感じたのかもしれませんが(^^;) 2003年に発表したセカンドアルバム「SOJKA」(「ソイカ」って読んでね。)は、ファーストアルバムより、ずーーーっとよくなっていました。 なので、ここではセカンドアルバムのジャケット画像だけアップします。
「SOJKA」(全10曲 33分10秒収録)はジャケットのデザインもずーーーっとセンスアップしたし(でもちょっと都会的なデザインで、彼らが歌っている「干し草」や「かえで」といった自然の歌とイメージが合わない嫌いがありますが。) ベルアズ・トラック社の黄色いトラックの絵もずっと小さくなったし。 ヘンな英語の歌は入ってないし。 二人の写真は1種類しかないですが(この二人髪型おんなじ・・・) 歌詞カードつきで、ベラルーシ語と英語で曲によっては「ベラルーシのことがよく分かってない外国人のための解説」がついてます。 例えば4曲目の「夏至祭のカリーナの木」という歌には「夏至祭(クパーラ祭り)とは・・・」と説明してあります。
さて、うれしいことに、このCDにはビデオクリップのおまけつきなのです。(^^) ベラルーシ人アーティストのプロモーションビデオなんて見たことないよ、という日本人がほとんどですが、このCDを買えばアレクサンドラ&コンスタンチンの「みつばち」と言う曲のプロモーションビデオを見ることができます!
この曲はベラルーシ語の古い詩にアレクサンドラ&コンスタンチンが曲をつけたものです。 解説によると、みつばちが飛ぶようになって、寒い冬が終わり、春になった喜び、暖かい夏になるよう願う歌詞だそうです。 ビデオでは、文字通り、光が差す春のベラルーシの森の中で、アレクサンドラ&コンスタンチンが 「みつばちよ、黄金の鍵を持ってきてよ。それで暖かい夏の扉をひらいて。そして寒い冬は閉じ込めてしまってよ。オイリャロオイリャロオ〜♪」 と歌っております。 (「オイリャロオイリャロオ〜」は翻訳不可能。「あらえっさっさ〜」などと同じです。) 春がきたときのベラルーシの人々の心情、そのまんまですね〜
そして、ビデオでは・・・突然「みつばち」が飛びます。これを初めて見たとき 「こんなみつばち、飛ばさなくてもいいのに・・・。」 と思いましたが、何度も見ているうち、 「このみつばち・・・何かいいかも・・・。」 と思えてきます。(^^;) (文章だけじゃよく意味が分からなくてすみません。) 詩はとても簡単で繰り返しが多いのですが、全曲を通じて 「アレクサンドラ&コンスタンチンって、ベラルーシ民謡のアレンジの才能あるよ〜!!!」 と思えます。これでいかなくっちゃ!
さて、このCDをすでにお買い上げくださった方もいると思いますので、(アクセスしているかどうか分からないけど。(^^;))ここで、「みつばち」以外の日本語訳の補足の解説をします。
2 「妹は兄の新しい家へ行く」 (オリジナルタイトルは単に「行く」なのですが、歌詞を読むと、「兄が家を新築して、そのお祝いに妹が行く・・・」という古い詩に作曲したものであることが分かりました。なので「遊びに行く」ではなく「新しい家に行く」にしました。「新築祝い」や「引っ越し祝い」に行く・・・っていうのもタイトルとしては変だし・・・。 それからベラルーシ語では英語の「sister」や「brother」のように「姉と妹」「兄と弟」の区別が単語からはつかないので、訳すとき困りましたが、昔のベラルーシでは男性は結婚することが決まると自力で家を建てないといけなかったので、 「ってことはいい大人なんだろう。じゃ、兄にしよう。兄ときたら、姉、というより妹のほうが「兄さんは年上の大人なのよ。」というイメージができるので、妹にしてしまえ。」 と勝手に兄と妹にしてしまいました。ご了承ください。)
3 「干し草」 (ベラルーシ民謡をアレクサンドラ&コンスタンチンがアレンジした曲。よく見ると「2003年度インターナショナル・ソングコンテストで民謡アレンジ賞を受賞した曲」と書いてあります。 そんなコンテストがあるんだな・・・と思いながら聞くと、いきなりかったるいアカペラで始まるので 「どこがアレンジ賞受賞やねん?!」 と思いましたが、曲が終わる頃には 「・・・ああ、確かにアレンジ賞を取ったのが分かったわ・・・。」 と大納得しました。)
4 「夏至祭のカリーナの木」 (これもベラルーシ民謡をアレクサンドラ&コンスタンチンがアレンジした曲。夏至祭のとき、川に流す花輪がどこにあるの? とカリーナの木に尋ねる歌。 「カリーナとかカリンカって何?」 と思われる方も多いでしょうが、辞書によると「かんぼく、ガマズミ属 スイカズラ科の植物」だそうです。日本語に訳しにくい・・・ので、そのままカリーナにしています。あのロシア民謡のカリンカが「かんぼく」とか「すいかずら」とか訳されていたら、こんなに日本人の間で有名にならなかったかも・・・(^^;))
5 「かけす」 (これもベラルーシ民謡をアレクサンドラ&コンスタンチンがアレンジした曲。といってもほとんどアカペラの曲で、復活祭のときに歌う歌です。アレンジしたといっても、おそらくこの歌がもっとも原曲に近い形のまま収録されていると思われます。 歌詞は1行おきに 「神の子イエスは復活した!」 と歌っているのですが、それ以外の歌詞は 「かけすが飛んできて、妻をさらっていった。かけすよ、返しておくれ〜!」 という具合に復活祭とは全然関係ない歌詞・・・; しかも収録曲の中でこの歌が一番単純で、あっと言う間に終わってしまう・・・。どうしてこの曲をアルバムタイトルにしたの?! とアレクサンドラ&コンスタンチンにききたいです。 そう、「SOJKA」とは「かけす」のことなのです。でもアルバムのタイトルが「かけす」っていうのもねえ・・・。何か変。 翻訳に苦しんでいたのですが、CDのジャケットには英語で「SOJKA」とあるのを見て、 「英語のままでいいや〜。『SOJKAって何?』 とこのCDを手に取った人が理解に苦しむのが見えるようだけど、その答えは、CDを開けば分かる、ということにしとこ。」 と考え、(^^;) 英語表記のままとしました。) 6 「家に帰るとき」 (ベラルーシ語解説では「8月の歌」とあり、英語解説では「収穫の歌」とあります。そう、夏が短いベラルーシでは8月が収穫の月なのです。 歌詞は「夕暮れになったので、そろそろ家に帰りましょう。空に露(星)が落ちたよ。」といった内容ですが、これは「収穫作業のため、1日中畑仕事をしていた」という意味の歌です。 ベラルーシ語の古い詩にアレクサンドラ&コンスタンチンが曲をつけたもの。 インドの楽器であるシターの音色が、一味違う不思議な雰囲気を出しています。)
7 「野に立つ柳」 (ベラルーシ民謡をアレクサンドラ&コンスタンチンがアレンジした曲。解説によるとラブソング、とあります。 柳の木を愛を求める若い女性にたとえて歌っています。それで、「野に立つ」と擬人法で訳してみました。 ベラルーシの民謡は、自然と人間が混合一体している歌が多いのに感心します。)
8 「かえで」 (ベラルーシ民謡をアレクサンドラ&コンスタンチンがアレンジした曲。これも復活祭の歌とあります。歌詞を読むと「緑のかえでの木」となっています。復活祭は春にあるので、普通葉っぱは緑色ですよね。 今日は復活祭なので「庭にあるかえでの木のところに若者達が集まってきたよ・・・」という内容の歌詞です。)
9 「森よ、ざわめかないで」 (ベラルーシ語の古い詩にアレクサンドラ&コンスタンチンが曲をつけたもの。これもラブソング、とありますが、女の子が失恋してしまった歌です。 「森よ、ざわめかないで。私をこれ以上悲しませないで。自分でも分かっているの、あの人が私のものでないってことは・・・」 歌詞の意味が分からなくても、せつないメロディーで、わざわざ私がここで解説する必要がないぐらいです。 それにしても、ベラルーシ人って、詩の世界ではしょっちゅう植物や鳥と会話してますね〜。自然との境界がないんだな、と思います。)
10 「パラレルワールド」 (コンスタンチン作曲のインストゥルメンタル。民謡ばっかりやってると飽きてきて、1曲はベラルーシ語とも民謡とも関係ない曲を入れたくなるんでしょうか?(^^;) でも彼の音楽世界がよく感じられる曲です。タイトルの意味は歌詞がないので 「なんでまたパラレルワールド?」とききたくなりますが・・・(^^;))
何だかだらだらとたくさん書いてしまいましたが、それだけアレクサンドラ&コンスタンチンのセカンドアルバム「SOJKA」はお勧め、ということなのです。ファーストアルバムのときとは大違い。 「この調子でがんばれ!」 とアレクサンドラ&コンスタンチンを心の中で応援してます。(^^)
by ベラルーシのT
Date:2003/12/05(Fri)
10:22
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