Tのベラルーシ音楽コラム
サロートキヤ」
スヴャトラーナとウラジーミルのサロートキヤ夫妻。ソプラノとバリトンの美声を披露しています。全24曲 69分37秒収録でこれもお買い得です。
それにしてもベラルーシの民謡歌手やアンサンブルグループは、CDにタイトルをつけないことが多いです。 めったにCDを出さないので、いちいちタイトルをつけて、他のアルバムと区別する必要がないからなのでしょうか。 なので、タイトルがない民謡CDは、そのグループにとっては「唯一」にして「ベスト」のアルバム、であるということでしょうか。 だから収録曲が多いのかな? とも思いますし、多いため、またベラルーシ人はよく知っているのか、歌詞カードがついてないことが多いです。
さて、話を戻して・・・ この二人は1984年にスヴャータのメンバーとなり、スビャータが1994年にビャセッレに改編してからも、そのままメンバーとして活躍しています。 つまりビャセッレのメンバーが、「ま、一つ夫婦二人でCDを作ろうか。」てな感じで作ったアルバムです。そういうこともあるんですね。
ベラルーシではどうも、歌手にしろ俳優にしろ「女性の声は高ければ高いほどよく、男性の声は低ければ低いほうがいい。」という声に対する美意識があるようで、そういう意味でバッチリのコンビです。(旦那さんのウラジーミルはバリトンでバスじゃないですけど。) それにしても美声のお二人。パツークさんとちがってビブラートがかかっていないので、聞きやすく、二人のハーモニーもすばらしいです。普段から仲がいいんだろうな〜、この夫婦、と思えてきます。こぶしのきいた演歌が嫌いな人にもお勧めです。(^^;) またこの二人は、パツークさんと同じく、ベラルーシ名誉歌手として賞をもらったことがあります。折り紙つきのサロートキヤ夫妻の声と世界が堪能できるCDです。
CDにはベラルーシ語と英語での紹介文付き。といっても例によって内容のあまりない紹介文ですが。 (^^;) ところでベラルーシ音楽CDの解説はたいがいベラルーシ語だけ、あるいはベラルーシ語と英語の二ヶ国語だけです。ロシア語が入っていないことが多いので、私のように英語が下手くそな者は、苦しみながらベラルーシ語の解説を読むことになります。ロシア語が入っていることもたま〜にありますが、少ないです。 このCDにも有名なベラルーシ民謡が多数収録されています。 ただ1曲だけ「キリル・トゥラウスキーに捧ぐ」という特別に作詞作曲された歌が収録されています。これだけ民謡ではありません。 キリル・トゥラウスキーってどんな人なのでしょう? 一言で説明すると12世紀にトゥーロフで生まれた宗教啓蒙家で「魂と体」といった何だか難しそうな著作をたくさん残しました。没年ははっきり分かっており、1184年だそうなので、日本で言うと平安時代後期のころに生きていた宗教家(スラブ正教)です。 そんなに昔の人なのに、捧げる歌が現代になってから作られるほど、ベラルーシ人の尊敬を集めている人なんですね。(日本だとあまり考えられないですね〜。民謡歌手が「XX和尚に捧げる歌」とか「○○上人に捧ぐ」といった歌を歌っていることになりますから。) ところで余談ですが、裏ジャケットの写真で、二人が着ている民族衣装が豪華です。ウン万円はするでしょうねえ。 ハローシキのようにメンバーの数が多いと、専属の衣装係が、公演に合わせて、民族衣装(舞台衣装)を作っているのですが、普通の民族アンサンブルグループは、民族衣装を作っている工房に注文して調達しています。 昔はベラルーシ人はみんな自分で自分の服(民族衣装=普段着)を家で作っていたのですが、今はベラルーシの民族衣装は、普段着というより、「民謡歌手や民族舞踊のメンバーが着る舞台衣装」になってしまっています。 なので、ベラルーシ人からよく 「日本人で着物を着ているのはみんな民謡歌手?」 と聞かれます。(^^;) そのようなわけで、ベラルーシでは普通、民族衣装に身を包んだ人と街ですれ違うことは、めったとありません。ちょっと残念です。
by ベラルーシのT
Date:2003/12/05(Fri)
08:54
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