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Tのベラルーシ音楽コラム

ハローシキ

 国立民族舞踊団として、最も古くに創立され、ベラルーシ国内ナンバーワンの実力を誇るハローシキ。
 画像は1997年製作のCD、「ハローシキによるハローシキ」(CDジャケットには2002年製作、とありますが実際は1997年に収録された作品集。全17曲。)
 舞踊楽団なので、歌詞のない舞踊曲が多いのが特徴。また演奏に使用された楽器は木琴、ツィンバロム、バイオリン、クラリネット、バグパイプ、ベースギター、チェロ、フルートのほかドラム、エレキギター。・・・というわけで伝統的な楽器以外にも現代的な楽器も取り入れていることが分かります。しかし曲調は民謡。しかも踊りやすいよう、テンポの早い曲が多いです。
 
 特筆すべきはポーロツクにあるソフィア聖堂で16世紀に上演されていた音楽劇の楽譜が見つかり、それを復元し、さらに舞踊曲にアレンジした6曲を「ポーロツク断章」としてハローシキが発表したことです。これがこのCDに収録されています。
 どの曲も中世のころのベラルーシの雰囲気がよく表れ、それでいて洗練されたアレンジで、さすがハローシキ、と頷けます。
 
 さて、CDを開くと、案の定「今まで講演を行った国々」が列記されています。イタリア、スペイン、インド、アイルランド、イギリス、ベルギー、ドイツ、日本・・・ん、日本?
 そうです。今から約15年前、ミンスクと仙台は姉妹都市提携を結んでいるのですが、その関連で、ハローシキは宮城県労働組合の招きによって、ミンスクの労働組合代表団とともに来日しています。そこで行われた交流の夕べで、ハローシキは舞台に立っているのです。

 このことを教えてくれた日本人の方は、そのとき観客で舞台の様子を写真に撮っていました。その写真も私に見せてくれたのですが、確かにハローシキのメンバーの女性が踊っていて、舞台奥にはバヤン(アコーディオンに似ている楽器)を演奏している男性が・・・さらにはソ連の国旗が掲げられていました。(^^;)

 ハローシキはベラルーシナンバーワンだから、代表団に選ばれて日本へ行ったんだろうなあ〜とそのとき思ったのですが、その後、
「私の妻はそのときハローシキのメンバーとして日本へ行きました。」
という人と知り合いました。
 その人はハローシキの衣装係をしていて、ハローシキで踊っていた奥さんと結婚した人です。
 その人の話によると当時ベラルーシ人が「日本に行く」というのはめったとないことで、ハローシキの訪日が決まったときは、家族中が大騒ぎとなったそうです。
 そして奥さんのお土産は日本製のラジカセ。
 ちなみに当時、日本製のラジカセをベラルーシで売ると、一家族分の家具一式が買えるほどのお金になったそうです。
 この一家はラジカセを換金することなく、大事に使っていたそうですが・・・。
 ちなみにハローシキのメンバー(ダンサー役)の定年は40歳だそうで、現在この奥さんは年金生活者となっています。
 
 さて、この他に私は
「私の娘はハローシキで踊ってます。」
という人を二人知っています。一人は学校の歴史の先生で、もともとベラルーシの歴史や民族に深い理解がある人です。それで
「娘が生まれたらぜひハローシキに入れよう。」
と思っていたそうです。娘さんは見事狭き門を通過。まだ小学生ですが、毎日のように練習に通い、ときどき舞台に立っているそうです。
 日本で言うところの「娘を宝塚に入れたい。」といった感じですかね。
 
 もう一人の人はその逆で
「ハローシキなんて入れたくなかった〜〜〜」
と嘆いています。お母さんはロシア生まれのロシア育ち、ロシアで働いていたベラルーシ人の旦那さんと結婚し、しばらくロシアで暮らしていたのが、旦那さんの転勤に伴いベラルーシへ引越し。(って言っても当時はソ連という一つの大きな国の中を移動しただけに過ぎないのですが。)お母さんはベラルーシ語は今でも下手。
「ロシア文学の偉大さに比べると、ベラルーシ文学なんて・・・。」
と明言しております。(そりゃあ〜ドストエフスキーやトルストイといったロシアの文豪に比べたら、ヤンカ・クパーラなんて、全然有名じゃないですが。)

 ところがその娘が幼稚園のとき、ハローシキの公演を見て、大感激し、泣いて両親に頼むので、入団希望の手続きを取ったということです。
 私などは「なんて偉い娘さんか。」と感心することしきりなのですが、お母さんは
「いつかやめてくれないか、といつも思っていた。」
・・・そうです。
 日本で言うところの
娘「芸能界に入りたい! オーディション受けさせて!」
親「芸能界だなんて、そんなかたぎじゃない商売・・・いけません!!!」
といった感じでしょうか。(^^;)
 
 さて、その娘さんは必死で練習し、今やハローシキメンバーの若手ナンバーワン候補として、舞台に立っています。
 しかし、ここまでくるのには大変な努力が必要だったそうで、お母さんが言うには
「女性ダンサーが走っていって、パートナーの男性が、受け取め、ぱっと抱き上げる、という踊りを今娘が練習しているんだけど、ほんのちょっとでもタイミングが合わないと、女性が転んでしまうの。それで両足があざだらけになってしまった。どうしてうちの子はこんな仕事を選んだのか・・・・(T_T)」
 そんなにお母さん、嘆かなくてもいいのに・・・とも思いますが、この話を聞いて
「やっぱり国内ナンバーワンのグループだから、メンバーの人たちはみんな影ですごい努力をしているんだなあ・・・。」
と思いました。

 残念なことに私はテレビやビデオでしかハローシキの華麗な舞踊を見たことがありません。ビデオは4巻がベラルーシでは売り出されましたが、現在はその入手はかなり難しいです。
 ハローシキはベラルーシで定期公演を行っています。もし、機会があればぜひご覧ください。音楽だけならこのCDで聞けますが、やっぱりハローシキのすばらしさは舞踊にあると私は思っています。
by ベラルーシのT
Date:2003/12/02(Tue) 09:43
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