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ベラルーシの「人と人形劇団」が芥川竜之介作品を上演 その2

   さて、初演の日が来ました。
「人と人形」の劇とはどんなものか、と楽しみにしていたのですが、上演中は写真撮影は不可、ということで演じている最中の画像をお見せできず残念です。画像は終演後、特別に撮影させてもらったものです。人形を動かすシーンは画像のような感じでした。人形師の顔や手などは丸見えです。(これが箱人形劇との大きな違い)

 舞台装置はいたって簡素です。ただ舞台のど真ん中に人形用の舞台がこのようにあります。それより前面の客席までのスペースもとってあって、そこで人(つまり俳優さん)が演技をする、というのが特徴です。(近眼の人は前の方に座らないと、もう一つ人形が見えにくい。)

 と言っても、人形が演技するスペースと俳優が演技するスペースが、きっちり分けられているわけではなく、人形が前の方に飛び出してきたり、人形用舞台の上で人形と俳優が会話を交わしたりします。
 このほかに4枚の黒い衝立てがあって、転がるよう下に車がついているのですが、それで人形用舞台を隠して、その前で俳優さんが演技している間に人形用の舞台の装置を変えたりします。見ている分にはおもしろいのですが、装置の転換、大変そうでした。
 今回人形師兼俳優さんは男性3人だけで、女性1人は姿は見せず、舞台装置を後ろで変えていました。さらにもう1人の女性は音響を担当して、本当に5人だけで全てをこなしていました。すっごい大変だと思いました。
(ちなみにこの5人の他、美術担当の人が2人、外部から助っ人に来ていました。 後は、俳優さんが見せる武術のシーンを指導した空手の師匠、団長さん、私の総計10人が上演に直接関わりました。この中で私が一番何もしてない・・・; なのに カーテンコールのとき、名前を呼ばれて舞台に上がらされ、どうしよーと思いました。

 そんなわけで人形師はご覧のように黒っぽい衣装を着ていますが(劇の内容に合わせ、色は黒だけど形は空手着)顔は見えています。
 他に特徴としては、一応人形が話の筋を追うよう演技しているので、状況説明のような文章(「時が過ぎ、やがて秋がやってきました・・・。」とか「こうして白はまた白い犬に戻ったのです。」とかいうセリフ)は俳優さんがナレーションすることです。

 それから画像の汽車より大きい巨大犬・・・(汽車に轢かれそうになった子どもを助けるシーン。実際は黒犬の人形を使いますが。)のように、人形同士や人形と人間の大きさの関係を、かなり無視しています。いや、もう、そんな細かいところにはこだわらないのです、この劇団は! そんなことより、劇の内容、内容! (^^;)

 演出の仕方はよく考えてあっておもしろかったです。原作を先に読んでいたので、このシーンはどうするのかなあ、とか思っていたのですが、演劇ってやっぱりアイデア勝負よね、と感心しながら見ました。
 とても短い作品なのに、原作にはない部分の追加もありますが、1時間強の舞台にしたのは、すごいです。それに人だけや人形だけの出演では表すことのできない、人&人形だからこそできる表現や技術、そしてユーモアがあって、新鮮でした。
 それから、白が黒犬になったり、また白に戻るときは、いつ人形をすりかえたの か、すごく素早くて私は見ていて分かりませんでした。手品みたい!
 芥川竜之介も自分の作品がベラルーシ人の手によって劇にされたのをあの世から見て、思わずのけぞる・・・いや、きっと喜んでいることでしょう。(^^;)

 苦労の塊のようなこの「白」ですが、幸い9月からミンスク市内の劇場で、定期的に上演される予定です。でないともったいない・・・。これでもっと多くのベラルーシ人の目に触れることとなるでしょう。
 ああ、良かった。
 パンフレットは次回「白」の字を入れたのを作る、と言っていたし(結局大使館関係者は大使ご夫妻はおろか、だれも見に来なかった; 今回日本人観客は私を入れて二人しか来なかった・・・;)訳したのに時間がなくて覚えられなかった日本語セリフもそのときまでに覚える、と言っていたし。
 さらに磨きのかかった劇にして、日本の芥川竜之介をどんどんベラルーシ人に紹介してくださいね。>「人と人形劇団」のみなさま。
(2001/6/29 by T)

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