Back
Top
Next
Tのベラルーシ音楽コラム
スタールィ・オルサ「渦」
前回のコラムにも書きましたが、あの「ブ〜〜〜!!!」という音で、ベラルーシ音楽界に殴り込みをかけた(^^;) グループ、スタールィ・オルサは2001年セカンドアルバム「渦」を発表しました。
「こんな中世の古臭い歌、売れないんじゃないの?」
という関係者の予想を、ばりっと打ち破り、このセカンドアルバム発表後、スタールィ・オルサは若者の間で大人気、CDは店頭に置かれるとすぐになくなり、ベラルーシのテレビ局が歴史番組を放映するときは、スタールィ・オルサの楽曲をバックミュージックに採用するなど、すっかりベラルーシミュージックシーンに欠かせない
グループになりました。
ファーストアルバムは、完売したので再リリースされ、セカンドアルバムも、2003年12月現在、完売。そして来年再リリースが決定しています。
どうしてこんなにスタールィ・オルサが売れたのか? 私なりに分析すると・・・
・民謡ではないベラルーシ中世音楽、というオリジナリティー。「こんな音楽は始めて聴いた!」という新鮮さがあった。
・古い音楽をたくみにアレンジしたメンバーの才能。
・暗いことが多いベラルーシの歴史の中で、最も輝いていた中世時代に対する憧れ。
・リトワニア大公国の領地内にありながらも、ベラルーシ人としての民族性や文化を保てた中世時代の音楽を聴くことによって「これこそ、ベラルーシだ! 自分はベラルーシ人なのだ!」という誇りに満たされるため。
・・・といった点がベラルーシ人の間で人気が出た理由ではないでしょうか?
さて、セカンドアルバム「渦」は全21曲 47分57秒収録で、ファーストアルバムより
「音楽的評価が高い」と一般的に評価されています。
リーダーがズィミツェル・サスノウスキーさんであることに変化はありませんが、アイルランド・バグパイプ・クラブ(こんなクラブがベラルーシにあるんですねえ。)のメンバー、A.ジューラと、グループ「カメロット」のZ.シーダロビッチという二人が、ゲスト参加しています。
他にもゲストでグループ「コントル・ダンス」と「ハスパダルィ ズパド ヴィリニ」が参加しています。
コントル・ダンスって何かと思えば、英語で言うと「カウントリー・ダンス」のことでした。
「ハスパダルィ ズパド ヴィリニ」は訳すと「(リトワニアの)ビリニュスからきた旦那衆」です。リトワニア音楽をしているグループなんだろうな、と思います。
さて、スタールィ・オルサの音楽に対する姿勢は、セカンドアルバムにおいても変化がなく、さらに洗練されたような気がします。
ジャケットのデザインも相変わらず怪しげ(^^;)ですが、だいぶ柔らかくなりました。
収録された21曲のうち、中世舞踊曲が4曲、ベラルーシ民族舞踊曲が2曲、ラトビア民族舞踊曲が1曲入っていますが、それ以外は、ベラルーシ中世音楽をモチーフに、スタールィ・オルサが作詞作曲したものです。
ではここで、全曲ではありませんが、簡単に解説です。
1 「天使」(ラトビア民族舞踊曲)
(今回は突然ラトビア音楽で始まりました。(^^;) でもタイトルはベラルーシ語。(^^;) 英語で天使を「エンジェル」ロシア語で「アンゲル」といいますが、ベラルーシ語では「アニョール」っていうことが勉強になった曲。曲名を訳しながらベラルーシ語の勉強をしております。それにしてもアニョールって言葉の響きが
美しい・・・。
この曲を始め、収録されている舞踊曲は踊りやすそうな軽快な曲が多いです。そのせいかこの天使、という曲は宗教上の天使ではなく、天使のように好きな人のことを表している曲のように聞こえます。)
2 「呪文の言葉」
(衝撃の(^^;)ファーストアルバム1曲目とほとんど同じタイトルですが、ちがう曲です。前作「呪文」と比べるとずっと普通の曲です。公式サイトを見ると「悲しみから逃れるための呪文の言葉」とあります。そうだったんですね〜)
7 「渦」ベラルーシ民族舞踊曲
(アルバムタイトルにもなった曲ですが、この渦って何だろう? と思っていたら、何のことはない、水の渦のように大勢が旋回しながら、ぐるぐる踊るので「渦」と名づけられた・・・そうです。
舞踊曲にはこのように、踊るときの形態を元に、その曲のタイトルを決めることが多いそうです。)
さて、「ベラルーシの古い伝統楽器を使っているのは分かるけど、どれがどんな音色なのか、分からないよ。」
という方には ベラルーシ古代楽器集(11,12,13,14)で、4つの楽器の音色を個別に聴くことができます。
11 ベラルーシ・バグパイプ
12 オカリナ
13 グースリ(スラブ琴)
14 スヴィレリ(木笛)
・・・でそれぞれ短いですが、ソロ曲を聴くことができます。
私の感想としてはグースリの音色が、意外と明るく、軽く、それでいて多くの音が重なっているように聞こえました。とても不思議な音色です。
15 「ビールの泡」
(収録曲のうち、この曲と17「ニャモン川」にしか歌詞がありません。ますます歌詞のある歌が減ってしまったスタールィ・オルサ。(^^;)
さて、ベラルーシのお酒といえば、ウオッカをすぐ思い浮かべる方が多いと思いますが、中世のころはまだウオッカが発明されておらず、当時の人々が飲むのは、もっぱらビールかワインでした。そのビールを飲んで楽しむ人々の歌です。)
17 「ニャモン川」
(ニャモン川は、ベラルーシ西部を流れるニョマン川の古い名前です。ちなみにニョマン川はロシア語でネマン川といいます。
ニョマン川のほとりにある都市として有名なのはグロドノです。
ベラルーシ人が一番好きな川はこのニョマン川らしく、よく詩に登場しますが、スタールィ・オルサも、この川を歌った曲を作りました。男性コーラスが力強い印象の歌です。)
18 「ワルツ」
(癒されます〜〜〜〜〜(^^)
19 「ダンス」
(ファーストアルバムの7「ダンス」と全く同じタイトルの曲です。それで
「この二つの曲は同じ曲で、アレンジの仕方がちがうだけだ。」という私の主張と
「いや、似ているが別の曲だ。」という夫の意見が真っ向から対立しました。
結局夫の意見を容れ、別の曲、ということに翻訳ではしていますが、やっぱり同じ曲(主旋律が同じ)に聞こえるんですけど・・・。(^^;)
う〜ん、このコラム、全然解説になってませんね。)
20 「ルエヴィット」
21 「ルエヴィット DJ Anton Mix」
(20のほうを聴いたとき、「バグパイプと笛の音がこんなにかっこよく聞こえるなんて〜!」と驚きました。
しかし、21を聴いたとたん、驚きも倍増。もっとかっこいいです。
とても中世の音楽がモチーフの曲とは思えません。
いやあ〜〜〜、例えばディスコで突然この曲が流れたら、すごいだろうな〜と思いました。何せバグパイプと笛ですから。でも、本当に驚嘆の曲、ルエヴィットです。
さて、解説の続きにもなるのですが、いろいろとベラルーシ音楽の曲名やアーティスト名を訳してきて(間違っているかもしれないけど、すでに1000曲は曲名をベラルーシ語から日本語へ訳しましたですよ。たぶん日本人でベラルーシ音楽の曲を私以上にたくさん翻訳した人っていないだろうなあ。大して自慢にもなりませんが。)このスタールィ・オルサほど翻訳者泣かせのグループはおりません。
ベラルーシ民謡や他のアーティストのCDなら何とか訳せましたが、スタールィ・オルサの場合は、本当に翻訳が難しくて、翻訳作業のたび、頭をかきむしり、おかげで頭の両側がはげとなってしまい・・・
というのは冗談ですが、スタールィ・オルサの音楽は中世音楽なので、そのタイトルのとなる曲名に使われている言葉も中世ベラルーシ語という、今使われているベラルーシ語とはちょっとちがうのです。
それで現代ベラルーシ語の辞書を引いても載っていない、ベラルーシ人にきいても分からない・・・
「国立図書館にある『中世ベラルーシ語辞典』で調べるしかないのではないか。」
とベラルーシ人からアドバイスされたりしていました。
例えばセカンドアルバム収録の
3 ブランリ 16 パドィスパニ 20 ルエヴィット って何なのか、未だに分かりません。
公式サイトができたので、
http://staryolsa.com/
その英語ヴァージョンのほうに、スタールィ・オルサ自身がベラルーシ語から英語に訳したのが載っていないかな? そしたら英和辞典をひけば分かるんだけど・・・と期待してアクセスしてみましたが・・・載っていない!!! (T0T)
だいたい、一般的なベラルーシ人ですら分からない言葉を、曲名に選んで、どうする?! と思いました。
上記の質問をプロデューサー氏に尋ねても、分からない・・・それでもプロデューサ−と言えるのか?!
(T_T)
そもそもグループ名の「スタールィ・オルサ」も、何のことやら分からなくて、3日間ぐらい悩みました。「スタールィ」は「古い」あるいは「年寄りの」という意味であることは分かるのですが、「オルサって何だ?!」
辞書をひいても誰にきいても分からない・・・
ここからは文法の話になるのですが
「オルサってAで終わっている単語だから、女性名詞なのに、どうしてスターラヤでなくてスタールィ、と男性名詞に合わせた語尾変化をしているんだろう、この形容詞・・・。」
と、悩みまくっていました。
周囲のベラルーシの人々は
「これって固有名詞じゃない? どっかにオルサという名前の古い村があってさ、その村がとても小さいので、誰も知らないんじゃない?」
と言っていました。
でも、よく分からないので、プロデューサー氏に電話したところ
「オルサって、古いベラルーシの男性名ですよ。」
と教えてもらい、一件落着。(^0^) 二キータみたいにAで終わるけど、男の人の名前なんだ〜、つまり「スタールィ・オルサ」は「年取ったオルサさん」→「オルサおじいさん」ということだったのです! パチパチ。
でも、グループ名が「オルサじいさん」というのも変なので私はこのグループを3年間も「古老オルサ」として日本に紹介していました。
メンバーのみなさん、若いのになんで「オルサじいさんなんだろうな〜? 昔オルサじいさんという有名な人がベラルーシにいたのだろうか?」
などと思いながら・・・
そして、ある日スタールィ・オルサが公式サイトを開設したので、アクセスしてみると・・・
ガーーーーーーン!!!
「グループ名はベラルーシのモギリョフ地方に流れている小さな川、オルサ川からとりました。」
と載っているではありませんか!!! (@□@;)
http://staryolsa.com/eng/dasje.shtml
(公式サイトのグループ紹介ページ。ただし英語です。)
プロデューサー氏の言葉を信じてきた私は一体何てことをしていたのでしょう。グループ名の訳をまちがえるなんて〜〜〜(T_T)
今スタールィ・オルサのCDをお持ちの方、
「げっ、古老オルサって書いてるじゃん!」
と怒らないでくださいまし。どうかお許しくださいませ。
そのようなわけで今後からはグループ名の日本語訳を「スタールィ・オルサ」にします。すみませんでした。
「スタールィ・オルサ?! 何じゃそりゃ。」
と思われた方、これは「川の名前」なんです!
・・・これで一つ、長年の疑問は解決しました。しかし、ルエヴィットって何だ?
という曲名の問題が残っています。
スタールィ・オルサの公式サイトの掲示板で質問すればいいのでしょうか? でもこの掲示板ベラルーシ語が飛び交ってる・・・
ロシア語で質問したら、すっごく浮き上がりそう・・・(^^;)
なので、勇気が出ないままでいます。
ああ、直接スタールィ・オルサに会って、質問できる機会に恵まれないものでありましょうか・・・。
これからもベラルーシ語の修練をしていく所存でございます・・・
スタールィ・オルサの翻訳が未解決ですみません。でも、何か新しく分かりましたら、このコラムに掲載しますね。
ここでちょっとまとめになりますが、スタールィ・オルサのファーストアルバムは「中世音楽を再現するのだ!」と気合が入っていますが、セカンドアルバムともなると、ネタも切れてきて、(^^;)作曲が自由にできるようになり、 肩の力が抜けたような感じです。
ファーストアルバムで多用されていた効果音もほとんど使わなくなり、自分達の音楽だけで勝負! しています。
煮物で言うと具によく味が染み込んだ感じです。
ファーストアルバムの新鮮な感じも捨てがたいですが・・・
まとめを書いてしまいましたが、スタールィ・オルサのコラムはまだ続きます。(^^)
by ベラルーシのT
Date:2003/12/07(Sun) 10:42
Back
Top
Next
Copyright (C) 2000-2004 Belaruski Pakoi All rights reserved. 最新の情報は
みつばちマーサ
の音楽ブログで!