昔の生活道具
衣装箱
昔ベラルーシでたんすの代わりに衣服を入れていた箱です。ベラルーシ版長持ちですね。
何も入っていなくても、箱自体がどっしり、しっかりしていて重いため、運びやすいよう脚の部分に車がついている物もあります。
たんすの代わりに使っていたわりには装飾が凝っていますね。これには理由があるのです。
ベラルーシの農村地域では1960年代まで嫁入り道具の一つとしてこの衣装箱を持っていく習慣がありました。
まず結婚が決まった娘はこの衣装箱を結婚式までに買っておきます。箱自体はかなり大きいので、専門の家具職人と鍛冶屋が協力して作り、職人のサインが入っています。 箱を買った娘が自分で色を塗ることもあります。そのほうが職人が描いたものより、価値のあるものとして見なされます。
特に花嫁道具として持っていく衣装箱は赤か青を基調にしたものが多いのですが、それは赤が「太陽」「火」「血」「健康」「人生」を意味し、青は「愛」「幸福」を意味する色だからです。
さて、婚礼の日が来ると、この衣装箱に花嫁の荷物を詰め、馬車に衣装箱をのせて、さらに花嫁の毛皮のコートを上にかぶせます。その上に花嫁が座り、花嫁の家族や親戚が馬車をひいて、花婿の家まで運びます。到着したら花婿とその家族、親戚に「きれいな衣装箱といっしょに花嫁が来ましたよ。お宅がより美しくなりますよ。美しい家族が生まれますよ。」 と言います。それから結婚式が始まります。
衣装箱はベラルーシ各地で作られ、地方によってデザインに特色が出ています。 また模様を描くのに筆だけではなく、細く削った棒で線を引いたり、ジャガイモやカブから作ったハンコで模様をたくさん散らしたりと、さまざまな工夫が凝らされました。
衣装箱には服だけではなく、装飾品やお金など大事なものも入れて保管していました。また蓋が平らなものはベッドの代わりにして、その上に寝ることもありました。 古くなった衣装箱は小麦粉入れや穀物入れにして長く使うようにし、家族の宝として大切にされてたのです。
現在では博物館や地方の旧家に行かないと、この衣装箱にお目にかかることができません。まずは画像でお楽しみください。(2001 by T)
(協力:ベラルーシ国立おもちゃ・人形センター)
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